歌舞伎俳優市川猿之助(47)が18日、東京・目黒区内の自宅で両親とともに倒れ、救急搬送された。父の歌舞伎俳優市川段四郎さん(76、本名・喜熨斗弘之=きのし・ひろゆき)は搬送先の病院で、母延子さん(75)は自宅で死亡が確認された。猿之助は意識がもうろうとした状態で搬送されたが、命に別状はない。

亡くなった段四郎さんは10歳で初舞台を踏み、69年に歌舞伎座で4代目段四郎を襲名。主に、兄である猿翁の一座で活躍していた。

7歳年上の兄市川猿翁(3代目猿之助)が光の人なら、段四郎さんは影の人といえるかもしれない。「スーパー歌舞伎」や古典の復活上演など、歌舞伎界の革命児として華々しく活躍する兄の舞台を、副将格としてしっかりと支えた。何事にも派手な兄に比べると、地味な人だったが、「ヤマトタケル」の帝、「新三国志」の曹操をはじめ、「俊寛」の憎々しい瀬尾の敵役、「夏祭浪花鑑」の釣船三婦の老け役など、深みのある確かな演技力で歌舞伎には欠かせない存在だった。時として与えられた役に不平を言う人が少なくない中、温厚な段四郎さんは役に真摯(しんし)に向き合い黙々と舞台に立った。

兄猿翁が病に倒れ、息子が4代目猿之助を襲名した公演の半ばに、自らも体調を崩し、舞台を離れていた。60代後半から70代にかけて歌舞伎俳優としてより充実した時を迎え、今度は息子の猿之助の舞台を支えるはずだったが、それはかなわなかった。不運な人だった。