歌舞伎俳優の中村橋之助(28)福之助(26)歌之助(23)3兄弟を取材する機会をいただいた。言わずと知れた歌舞伎界のサラブレッドだが、9月12、13日、浅草公会堂で、自主興行となる「神谷町小歌舞伎」を開催する。
記者は、歌舞伎はほぼ素人同然だ。それを告白すると橋之助は、「そういう方にこそ見て欲しいのです」とほほ笑んだ。
実際に取材してみると、そこには、彼らなりに歌舞伎の将来について“危機感”を肌で感じていることが分かった。
それは橋之助の「歌舞伎というと、どうしても難しいというイメージがある」という言葉が端的に表していた。これは50代半ばの記者でさえ感じていることで、どうしても「敷居が高い」という思いがある。
歌舞伎に限らず、どんな世界でも、“新規”を取り込むことは永遠の課題だ。現状にあぐらをかくのは、「座して死を待つ」ことにつながる可能性が高いからだ。そして、少なくとも3兄弟はこれに気付いている。だからこそ「見やすい演目を選び、そういう人に1度実際に見て欲しい」と行動に移したのだ。
「もちろん僕たちも成長し、お客さんも一緒に成長していただき、そして興味をもっていただき、いずれは本興行に来ていただけるような、歌舞伎のチュートリアル的なものにしたい」。兄弟を代表した橋之助は、明らかに歌舞伎界の将来を見据えていた。
その上で、裏方も自分たちでこなしている。「僕たちはおかげさまで、裏方の仕事を経験せず、今まで芸に集中できた部分があります。でも、こういう苦労もあって公演が成り立っているんだというところを感じるのは、すごくいいことなんです」。そんな橋之助の言葉が印象的だった。
余談だが、福之助が「お客さんを育てる」と話すと、橋之助が「その言い方は良くない」とたしなめるシーンもあった。これは長男らしい発言だったが、これに対し福之助は「今回は自分が演目の解説をするから、自分が育てる」と明言。これは、実に次男らしい発言だと思った。だがその後、「自分は3兄弟の中でお客さんに一番近い感覚だと思う」という発言があり、福之助なりの自負があっての発言だったようだ。
今回記者もチケットを購入し、観覧させていただく。福之助の解説に期待したい。【川田和博】



