「消えた」とみられていたことが、現実のものになる可能性が出てきた。高市早苗首相が、1月23日に召集される通常国会の冒頭で、衆院解散に踏み切る検討を始め、その場合は「2月総選挙」となる可能性が出てきたと10日付の読売新聞が報じた。3連休で地元に戻っている議員や永田町関係者の間には「本当に、衝撃が走った」(議員秘書)という声も出ている。
それでも、ネットニュースで先に報じられた9日深夜以降、さまざまな情報が飛び交い、さまざまな方面に話を聞いたが、真正面から報道を否定するような話は、なかった。
複数の関係者によると、首相官邸や自民党本部にとっても、今回の報道はほぼ「寝耳に水」の報道だったという。衆院解散は「総理の専権事項」と、いつもいわれ、通常国会冒頭の解散は「選択肢の1つとしては、存在しただろう」(関係者)という。ただ、物価高対策や、そこに対応する経済政策など、高市政権の「実績」として多くの国民が実感できる成果がまだ出ているわけではないため、通常国会冒頭の解散は「現実的ではない」との見方が強かったそうだ。
国会で物価高対策が盛り込まれた予算案を審議し、成立させた上で、満を持して信を問う、というシナリオが「王道。最も現実的だったはず」(同)だそうだ。そのため、降って湧いたような今回の「冒頭解散検討」を受けて、首相の「思惑」をいぶかる見方があるのも確かだ。
立憲民主党の野田佳彦代表は10日、「働いて、働いて、という割には、また政府空白をつくり、働かずに信を問うというやり方は果たしていいのか、厳しく問われる」「判断材材料として妥当なのか」と述べた。
ただ、「総理が自ら吹かせた解散風」(関係者)といわれる今回の事態は、覆るような空気がほとんどない。それを、与野党ともに受け止めている。解散風は止まらない状況になりつつあるのが、現在地だ。
10日には、報道を踏まえて、総務省や全国市区選挙管理委員会連合会が、実際に選挙になった場合に備えて準備に入るよう指示した文書を発出しており、「2月選挙」を前提に各方面が動き始めている。
今年2026年は年明け早々に、トランプ米政権がベネズエラへの軍事攻撃という「奇襲」を仕掛けて世界中の度肝を抜いたが、今回の高市首相の解散検討報道も、多くの議員や国民にとってはある意味で「奇襲」と映っている側面がある。高市首相がこれまで見せてこなかった政治手法の1面が、首相となったことで垣間見えた形にもなった。
これまで取材を続けてきて、一般的に衆院選は、秋から冬にかけて行われてきた。一昨年の石破政権での衆院選は10月27日投開票だったし、その前の岸田政権も10月31日。2009年の政権交代が起きた麻生政権での衆院選が8月30日だったくらいで、極端に暑かったり、寒かったりの時期の選挙は、ここ30年ほどほとんど記憶にない。特に冬の時期の選挙は、雪国の場合、選挙活動や投票行動にも影響が出る可能性があるため、現実的に選挙を行う時期とは思われてこなかったと聞いたことがある。
過去の衆院選(戦後以降の26回)を調べてみたところ、1月から2月に衆院選が行われたのは26回中4回しかなかった。直近では、1990年の2月18日に海部俊樹内閣で行われたケースがあるくらいで、「2月選挙」となれば36年ぶりとなる。
その前の2回は、いわゆる「55年体制」が生まれる前、自民党が結成される前の選挙で直接は比較できないが、いずれも与党が大敗したケースはない。1955年(昭30)、鳩山一郎内閣のもとで行われた第27回衆院選は、通常国会召集後に行われた政府側の演説に対する各党代表質問中に、衆院解散の手続きが取られ、「冒頭解散」のような形になった。鳩山氏はこの時、「天の声を聞いた」と述べたことから、「天の声解散」とネーミングされたといわれている。
高市首相やその周辺で極秘に検討されてきたとみられる「通常国会冒頭解散」。連休明けの1月13日から14日にかけて、高市首相は地元の奈良で、韓国の李在明大統領をおもてなしし、首脳会談を行う予定だ。そのため早ければ13日にも、高市首相が衆院解散の意向を表明するのではないか、という見方まで永田町ではささやかれているが、高市政権にとって「大きな賭けではないのか」とする声があるのも確かだ。【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)


