米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設阻止を掲げ安倍政権と対立、反対運動の象徴的存在だった翁長雄志(おなが・たけし)知事が8日午後6時43分、膵(すい)がんのため死去した。67歳。

 今年4月の人間ドックを機に膵がんが見つかり、手術。5月、がんの進行を表すステージは2と明かした。抗がん剤治療を受けながら公務を続け、先月27日、移設阻止に向けた最終手段として、埋め立て承認の撤回方針を表明。9日に県が沖縄防衛局の弁明を聞く聴聞が行われる予定だった。

 翁長氏は撤回方針表明後、公の場に姿を見せていなかった。8日夕、会見した謝花(じゃはな)喜一郎副知事は、今月4日に翁長氏と病院で面会し、意思決定できなくなった場合などの対応を任されたと述べたが、7日から意思決定に支障が出る状態だった。がんは、肝臓にも転移。謝花氏が「知事は職務復帰を目指して頑張っている」と話した直後の、訃報だった。

 自民党の沖縄県連幹事長を務めた重鎮だが、安倍政権の基地移設方針に反対して14年知事選に出馬し、「オール沖縄」旋風で初当選。15年10月に埋め立て承認を取り消し、国との間で法廷闘争を続けていた。

 翁長氏の死去で、11月に予定された知事選の構図は一変する。公選法により、県選挙管理委員会に死亡を通知後、50日以内に実施されるが、9月中となる見込み。首相が3選を目指す9月の自民党総裁選にも少なからず影響を与えそうだ。翁長氏は再選出馬を明言しておらず、移設反対派は候補者調整を急ぐ。与党は宜野湾市の佐喜真淳市長を擁立するが、翁長氏の「弔い選挙」となるため、逆風は必至だ。移設問題の行方にも影響する可能性がある。

 ◆翁長雄志(おなが・たけし)1950年(昭25)10月2日、沖縄県那覇市生まれ。法大卒。85年、那覇市議に初当選後、沖縄県議、那覇市長を歴任。当時は自民党所属。14年に沖縄県知事選に立候補するにあたり離党し反自民勢力からの支持を受け初当選。