東日本大震災による津波で被災し、塩害に耐えながらも、松くい虫が侵入し大きく衰えた、福島県指定の天然記念物「泉の一葉マツ」の後継樹の植樹式が21日、福島県南相馬市で行われた。

泉の一葉マツは、推定樹齢約400年のクロマツで、高さ約8メートル、根回り2・9メートル、幹回りは2・5メートルある。1本の木で二葉と一葉が交じる珍しい特性から、1955年(昭30)に福島県指定天然記念物に指定された。一葉松は現在、知恩院(京都)と東京国分寺市にあるのを含め、国内に3例しかないという。

ただ、東日本大震災の津波と松くい虫のダメージは深刻で、南相馬市は後継樹の育成を検討もノウハウがなく苦慮していた。その中、東日本大震災発生直後の11年4月に岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」の後継樹の育成に着手し、同年12月に成功した、住友林業に協力を依頼した。

住友林業が13年12月に泉の一葉マツの松ぼっくりを採取し、種子を回収するところから育成を行い、7本の苗木が育ち、うち一葉が確認された4本から2本がこの日、植樹された。

南相馬市の門馬和夫市長は「知恵と努力が詰まった苗木が育った。文化財の後継樹を育てるご苦労もあったようです。(東日本大震災は)大きな財産、人の命を奪っただけじゃなく、文化の後継にも大きな影響をもたらした。こうしたこと(後継樹の育成)が100年続く町づくりにもつながる」と感激した。

奇跡の一本松に続き、泉の一葉マツの後継樹育成にも尽力した、住友林業の中村健太郎資源環境本部森林・緑化研究センター長は「種からも(後継樹に)一葉が引き継がれ、科学的にも新しい知見が得られた。若い木は400年の木には至らないと思うが、将来に向けて育っていただけたら」と後継樹の“里帰り”が科学的にも意義が大きいと強調した。【村上幸将】