18日夜に山形県沖を震源に発生した地震で、震度6弱の激しい揺れに見舞われた山形県鶴岡市の「温海(あつみ)温泉」で20日、破損した配管の修理が進み、源泉の供給が2日ぶりに再開された。午後5時に、地域の住民が愛用する共同浴場「下の湯」にお湯が張られた。地震発生から2日、最大震度6強を観測した新潟県村上市などでも小中学校の授業が再開されるなど、復旧の動きが本格化している。

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1000年以上の歴史を持ち、山形県有数の湯として知られる温海温泉。観光と、住民の生活と心を支える源泉が、2日ぶりに湯船に張られた。午後5時、最初に湯が張られたのは、鶴岡市湯温海の路地にある下の湯で同7時に開館した。あつみ観光協会によると、残る2つの共同浴場「正面湯」「湯之里公衆浴場」は21日に営業を再開する予定。一部の旅館でも源泉の供給が再開され2、3の旅館は21日の営業再開を目指すという。

18日夜に発生した地震で、旅館と共同浴場に源泉を送る配管やタンクが被災し、複数箇所が破損した。源泉供給会社が補修に奔走する中、ある旅館の関係者が「午後に源泉の供給再開と聞いた」と言えば、別の旅館の関係者が「明後日に再開のようです」と答えた。一方、防災無線などを流す住民向けの有線放送で「再供給は3日かかる」とアナウンスされるなど20日午後、各所で情報が錯綜(さくそう)する中での供給再開だった。

観光業はもちろん、温海温泉がある湯温海に住む住民にとっても、源泉の供給再開は悲願だった。集落には昔から共同浴場があり、共同浴場で風呂に入ることが長い歴史の中で紡がれた地域の慣習となっていた。時代が流れ、内風呂がある家も増えたが共同浴場で風呂に入る習慣は、変わることがないという。

20歳から湯温海に住んで64年の渡部吉子さん(84)は、下の湯前のベンチに座り、今か今かと再開を待ち望んだ。渡部さんの家には風呂もシャワーもあり、地震発生後も断水がなかったため風呂に入ることはできるが「山から引っ張ってくる源泉は、本当にいいお湯。体の温まり方が全然、違う。1日でも早く入りたかった」と笑みを浮かべた。

あつみ観光協会の関係者によると、各施設に源泉を送る配管やタンクの点検、補修は完了しておらず、下の湯をはじめ営業を再開した各施設の状況を見て、さらなる破損箇所はないか点検を続け、必要があれば補修を続けるという。

各旅館も浴場や施設の各所に破損があり、1日も早い復旧にまい進する中、温海温泉が自慢の熱い源泉とともに、力強く復旧、復興の第1歩を踏み出した。【村上幸将】

 

○…18日の地震発生後、JR羽越本線は村上駅~酒田駅間の運行を見合わせていたが、20日の始発から運行を再開した。新潟駅から酒田駅に向かい、村上市脇川を走行していた18日午後10時22分に最大震度6強の地震に遭い、緊急停止を余儀なくされた特急いなほも、日本海沿いの線路を順調に走行。到着した新潟駅のホームには多数の乗客が降り、日常にまた一歩近づいた。