将棋の第67回奨励会三段リーグが26日、終了した。今月12日にすでに四段昇段を決めた伊藤匠(たくみ)(17)は15勝3敗でトップ通過。以下14勝4敗の冨田誠也(24)が昇段となった。また、古賀悠聖(19)は13勝5敗で2回目の次点となり、四段昇段を決めた。前回14勝4敗で次点となり、女性初の四段昇段が期待された西山朋佳(25)は7勝11敗に終わった。

伊藤は2002年(平14)10月10日生まれ。東京都世田谷区出身。5歳で父親から教わり、プロ棋士養成機関「奨励会」には13年9月に入会した。宮田利男八段門下で、今年の第45期棋王戦で挑戦者となった本田奎五段(23)は兄弟子でもある。

02年7月生まれの藤井聡太2冠(18)とは同い年だが、将棋界では後輩で、現役最年少棋士となる。「かなり差をつけられている。少しでも早く追いつきたいとの気持ちで頑張りました。同学年で2冠を取られている方なので、自分もそういった舞台で指したい」。早くも意識している。

今回はコロナ禍でスタートが約2カ月遅れて、6月20日に初戦を迎えた。「新しいパソコンを買って、外に出られない分、時間を有効に活用できた」と述懐する。得意戦法は相掛かり。「棋風は受け将棋。特徴を出せれば」。タイトル戦で活躍できる棋士を目指して、10月から戦う。

2位の冨田は96年2月13日生まれ。兵庫県三田市出身。やはり5歳で父親から教わり、07年9月に入会した。小林健二九段門下で四間飛車を得意としている。「17歳で三段になり、20歳までに(四段に)上がれると思っていた。前期は1勝7敗と成績がふるわず、退会も考えた」という。いろいろな職業について調べたが、好きな将棋を超える職業がないという結論に達した。

立命館大学経営学部を卒業して2年、コロナ禍で対局ができない時期に実家のある兵庫県三田市に戻り、自宅で将棋と向き合った。「将棋と向き合って、今までで一番心から楽しめた」と笑う。今年5月のリーグ開始前、大学のネット交流戦に参加して3連敗。「かえって気合が入りました」。この日午前の対局では苦しい局面になったが、「一瞬、頭がスッと軽くなる瞬間があって、勝負手が通った感じがした。今まで体感してない感覚になった」と話した。

同じ振り飛車党の菅井竜也八段(28)を尊敬する。タイトルを狙える棋士が目標だ。

古賀は01年1月1日生まれ。福岡市出身。3~4歳のころに祖父から教わり、11年9月入会。中田功八段門下。

来年4月に順位戦C級2組に格付けされる伊藤、冨田と違い、フリークラスからスタートする。規定の勝ち星を挙げれば、C級2組に入ることができる。過去、三段リーグ次点2回で四段に昇段した伊藤真吾(38)渡辺正和(34)渡辺大夢(32)佐々木大地(25=いずれも現五段)は、C2に入った。「僕は棋士になりたかったので、すぐに(フリークラスでも四段昇段を)決めました」。師匠も「自分の好きなようにしたらいい」とアドバイスしてくれた。

今月12日のリーグで連敗。気持ちを立て直して連勝した。「運が良かった」。高校卒業後、勉強の場を求めて大阪市に単身、出てきた。「空気になれて、大橋先生(大橋貴洸六段=28)に声をかけてもらった。いろいろな先生にも教えてもらえたのが生きた」と感謝を述べた。

9年前、全国小学生倉敷王将戦高学年の部で優勝した。低学年の優勝者は藤井だった。「プロに入られてすさまじい活躍をされている。すごいとしか言いようがない」と評する。福岡県出身で元日生まれといえば、加藤一二三・九段(80=引退)と同じ。古賀は、それより森内俊之九段(49)のような居飛車の手厚い将棋を心掛けるという。