昨春の緊急事態宣言時には、スピード感あるコロナ対策を打ち出し、全国区になった大阪府の吉村洋文知事(45)が新年を迎えた。都構想に代わる旗印を打ち出せるか。リーダーの手腕が問われる1年になる。

以下は長年、大阪府政、市政を取材するジャーナリストの吉富有治氏(63)の目。

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リーダーとは、組織を1つにまとめ部下を目的に向かって引っ張っていく者である。野球やサッカーでは監督やキャプテンが、職場では社長や各部署の責任者がリーダーの任に当たる。

では大阪府の吉村洋文知事はどうか。大勢の部下がいる大阪府庁の中ではリーダーに違いない。けれど大阪府民にとって彼は決してリーダーではない。吉村知事は選挙で選ばれた人間だが、それはリーダーを意味するわけではない。むしろ、ちゃんと仕事をしているかマスコミや大阪府民から監視される対象だ。

府民が知事をリーダーとあがめれば批判はできなくなる。そうなれば、いつしか知事も慢心して批判を嫌い、いずれ行政は独善に陥り暴走を始める。吉村知事には、ややその傾向が見られる。大阪市長時代には部下の提言をなかなか聞き入れないなどの辛口の声があったのも事実。彼をニューリーダーだと勘違いしてはいけない。自治体トップなど有権者の“下僕”にすぎないのだ。コロナが一定程度落ち着いた後、どういった施策を打ち出せるか。そこが府民の信頼を勝ち取ることができるかの勝負どころだろう。(ジャーナリスト)