「逃げヘビ」が、ついに発見、捕獲された。横浜市戸塚区名瀬町のアパートから逃げ出した体長約3・5メートル、体重約13キロのアミメニシキヘビ捜索は22日、初めて屋根裏に入って捜索。6日に行方不明となってから17日目、屋根裏の木や鉄筋の支柱に巻き付くような形で見つかった。警察、消防、市職員、ボランティアら数多く動員された大捕物。多くの専門家が指摘していた通り、ごく近い場所に潜んでいた“灯台下暗し”の結果となった。飼い主はヘビの譲渡を決断し、しばらくは横浜市で保管することになった。

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アミメニシキヘビが報道陣の前に披露されると、集まった約300人の地域住民たちも「お~」と歓声を上げた。ヘビは世間を騒がせ続けたことなど、お構いなし。白いケースに入れられ、丸まった太い体の上に、チョコンと顔を乗せて、すまし顔だった。

飼い主の20代男性は「一番は元気に見つかってくれたこと、誰にもケガをさせてしまったりしなかったことに、ホッとした。約2週間、不安を与えてしまった住民の方、捜索に関わってくれた皆さまに申し訳ない気持ちです」と謝罪した。許可を得ていたものと異なるケージで飼育していたこと、ペット不可の住居で他にもアナコンダやワニガメなど爬虫(はちゅう)類を中心に約20匹を飼育していたことも、あらためて反省。今後は「生きものとは無縁の生活をし、自分を見直したい」。16日ぶりの再会を果たした喜びに浸る間もなく、約3年半、一緒に生活してきた雄ヘビに別れを告げざるを得なかった。

発見に至ったのは、捜索当初から飼い主の依頼を受けて協力してきた、日本爬虫類両生類協会・白輪剛史理事長(52)の推察力だった。これまでも飼い主宅の屋根裏を小型カメラで見たことはあったが、中に入っての捜索を提案。管理会社とも相談し、隣人の許可も得て、屋根裏の潜入を助言した結果だった。

まずは、捜索スタッフが屋根に上って、ベランダ上部にヘビが屋根裏へ侵入出来る隙間を確認。室内に入り、風呂場にある点検口から白輪氏が上半身を入れた瞬間、「あっ、いた」。頭部などを屋根を支える鉄柱に絡み付け、大部分は体を温めるかのように木の隙間に丸まっていた。「私が頭を押さえて、もう1人がしっぽを持って。力は強いですが、頭の方から引っ張って、ほどくようにして、抱きかかえました」。おとなしく、従順だった。東南アジアの熱帯地域などに生息し、通常は28度以上で飼育することから、白輪氏は当初から建物内が一番有力と話していた。「あれだけの人海戦術で見つからなかったのだから、ここ数日は屋内だと確信していた。やはり遠くには行っていなかった。当事者じゃないけれど、眠れなかった」。開始から約15分で捕獲に成功。充実感に満ちていた。

同じアパートの1階に住む男性も「ようやく安心して暮らせる」と笑顔。発見の知らせを聞いて、子どもも大人も大挙し、ヘビフィーバーは密状態。アミメニシキヘビは、1度は“外出”も、すぐに“ステイホーム”を貫き、人などに危害を加えるような緊急事態は免れた。【鎌田直秀】

<ヘビ騒動の経過>

▼6日 午後9時頃に飼い主が帰宅時にヘビがケージにいないことを確認。カギが壊されベランダの網戸が10センチほど開いていたことから逃げ出したと判断して警察に通報。

▼7日 警察、消防を含めて捜索を本格開始。日本爬虫(はちゅう)類両生類協会の白輪剛史理事長に飼い主が依頼して捜索協力を要請。

▼12日 都内で「超党派 爬虫類・両生類を考える会」が日本爬虫類両生類協会と合同会見。適切な飼育時の安全性を訴える一方、管理体制の点検などの徹底を求めた。

▼13日 新たな策として「おびき寄せ作戦」を実施。普段から与えていたエサを入れたかごを5カ所設置し、捜すのではなく出てきてもらう方法も同時進行。

▼14日 警察、消防など100人態勢で捜索。飼い主は飼養していたビルマニシキヘビなどヘビ3匹、ワニ1匹、カメ1匹を爬虫類業者に譲渡。

▼15日 飼い主が引っ越し作業を行い退去。

▼16日 3日間でのべ300人の強化態勢を敷いた最終日。

▼17日 アパート自室の屋根裏など捜索したが発見に至らず。

▼21日 戸塚署午後4時をもって捜索打ち切り。

▼22日 屋根裏の骨組みに巻き付いている状態で発見。