東京・池袋の都道で19年に乗用車が暴走し、松永真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(同3)が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪で在宅起訴された、旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(89)の第8回公判が21日、東京地裁で開かれた。

被害者参加制度を使って裁判に参加し、飯塚被告に直接、質問した真菜さんの夫の松永拓也さん(34)が公判後、会見を開いた。松永さんは、証拠として妻子の生前の写真を提出したので見たか、見たなら具体的に答えるよう問いかけた。それにに対し、飯塚被告は「家族でご一緒の、楽しそうな写真。クリスマスと遊園地の(写真)莉子さんがお菓子を片手に手を上げていた」などと答えたが、松永さんは会見で「クリスマスや遊園地の写真なんて入れていない」と、飯塚被告の回答がでたらめだったことを明らかにした。

松永さんは写真の前に、妻子の名前を言うことが出来るか? と問いかけたが、飯塚被告は漢字では難しい旨の回答をした。松永さんは「私が1番、感じ取りたかったのは2人の命と我々の無念を問うためだった。『難しい、分からない』とか言って、逃げようとしたんだと思う。証拠に2人の生きていた写真を入れていた。見ていますか? と聞いたら『クリスマスと遊園地の写真』とか言ったが…そんなのはない」と怒りをにじませた。

その上で、松永さんは「莉子の名前も難しくて分からないと…難しいですかね? 自分が奪った命の名前、難しいですかね? 確認するために、私は聞いた、写真も間違っているし、名前も言えない。(飯塚被告の)2人や私たち遺族に対する認識は、この程度。なんでこんな人に、2人は命を奪われなければいけなかったのか…」と苦悶(くもん)の表情を浮かべた。