次期衆院選の前哨戦となる東京都議選(定数127)は4日、投開票された。無投票当選の小平市(定数2)を除く、41選挙区125議席で争われたが、小池百合子都知事が選挙戦最終日限定で出陣した都民ファーストの会は劣勢予測を覆す善戦で「小池劇場」の威力を見せつけた。

巻き返しを狙った自民党は惨敗した前回より議席を伸ばす勢いだが、自公であわせても過半数64議席には届かないことが確実となった。

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4年前の小池旋風の再来こそなかったが、一流のパフォーマンスを駆使した「小池マジック」は健在だった。告示前には改選時の46議席から最悪1ケタ台への陥落も予測されていたが、30議席以上をうかがう勢いだ。

小池氏から代表を継承した荒木千陽氏は前回、中野区(定数3)でトップ当選した。今回は「3番手争い」(陣営幹部)という危機だったが、荒木氏は「息も絶え絶えで言葉も聞き取りづらかった。移動する車内には酸素ボンベもあった」と明かす小池氏の応援を得て再選を果たした。

投開票前日の3日、告示前に過労のため入院し、選挙戦に姿を見せていなかった小池氏は突如、荒木代表を皮切りに10候補以上を電撃訪問した。小池氏は最後まで応援のマイクを握ることなく、口頭で数分程度、候補者を激励するにとどめ、街宣カーからガラス窓越しに手を振った。わずか半日ほどの応援が最大の追い風を生んだ。

政治手腕にたけた小池氏らしさも示した。サプライズは最終日だけ。コロナ対策や東京五輪・パラリンピックで連携を深める自公に配慮し、選挙の結果次第では新たな火種となる可能性を最小限とした。今後の都議会運営や自らの国政復帰を見据えた絶妙の一手。体調が万全ではない中の応援は有権者の心を引きつけるに十分。最後の最後で静から動に転じたサプライズ演出は、さすがの小池流だった。

都議会の新たな勢力図は拮抗(きっこう)しそうだ。東京五輪・パラリンピック、次期衆院選を前に国政復帰をにらむ「小池劇場」の幕が開いた。【大上悟】