山口県阿武町が4630万円を誤って町民に振り込み返還を求めた問題で、県警は20日、誤給付金と知りながら別口座に移し替えて不法に利益を得たとして電子計算機使用詐欺容疑で逮捕した無職、田口翔容疑者(24)を送検し、町内の自宅を家宅捜索した。

田口容疑者は代理人弁護士に「海外の複数のインターネットカジノで全部使った」と説明。銀行口座からは誤振り込み当日の4月8日から18日(19日付)までに34回にわたり4633万1922円を出金し、残高は6万8743円。出金先はデビット決済と決済代行会社3社だった。ネットカジノを使う時の金の流れの仕組み、残っている可能性について、ITジャーナリストの三上洋氏に聞いた。

三上氏によると、ネットカジノに入出金する方法で最も多いのは、代行業者に1度金を預ける「電子決済サービス」。ネットカジノ内で使える通貨は、この電子決済で換金する。また、日本国内に銀行口座を持つ海外のカジノ会社に国内送金して、通貨と交換できるシステムもあるという。

総額の約8割に当たる計3592万4691円が振り込まれたA社の場合、1回当たりの金額は125万6441円などいずれも1円単位の端数だった。三上氏は、A社はドル建て決済で、入金の上限が1万ドル単位と推測。デビット決済も上限5000ドルの入金とみる。端数がない300万円のB社、400万円のC社は、日本円で入金する会社ではないかと指摘する。

三上氏は「ネットカジノ上にどれくらい(通貨の)残高があるか、別の口座に移動させてないのかなどは、カジノ内の入出金の履歴をチェックしないと分からない」とし、残っていた場合は「容疑者が出金して返せばいいが、拒否すれば日本の警察の出番。ネットカジノは日本の捜査協定にない欧州の小国などに多く、差し押さえなどが難しい」と語った。【沢田直人】