介護がなければ日常生活を営むことができない要介護5の妻に「殺してほしい」と何度も懇願され、首を絞めて殺害。承諾殺人の罪に問われた河辺誠雄被告(81)の判決公判が4日、千葉地裁で開かれ、福家康史裁判長は懲役3年、執行猶予4年(求刑懲役3年)の判決を言い渡した。

大きな社会問題となっている老老介護。これ以上、迷惑をかけたくないという妻と、これ以上苦しませたくたくないという夫の間で起こった殺人に、裁判官も情状を酌量。福家裁判長は補聴器を着けた河辺被告に大きな声で「一生かけて被害者への償いを考えていくとの気持ちを忘れずに1日1日を過ごして下さい」と説諭した。

河辺被告は今年7月5日、千葉市の自宅で妻ハツ子さん(85)の首に2枚のタオルを巻き、絞殺した。ハツ子さんは2012年から要介護状態で、特に今年5月に入院してからは要介護5となり、「延命治療はしないでほしい」「自宅で死にたい」「首を絞めて殺してほしい」と、繰り返し懇願するようになった。河辺被告は「自分にはできない」と思っていたが、事件当日、トイレに連れていくため、立ち上がらせようとしたところ、ハツ子さんが転倒。意識を失った。「ベッドに戻しても妻の苦しみはなくならず、増えるだけかもしれない」と考え、「失敗したらもっと悲惨になる」と15分以上、力を入れ続けて殺害。「妻を殺した」と110番通報した。

10月21日に行われた初公判で、証人に立った娘は「父にとって母は世界で1人の存在。身を切られるほどつらく、十分罪は受けている」と証言した。被告人質問で河辺被告は「妻との44年間にあった出来事を書き残している。償いを永遠に考えていく」と話していた。