立憲民主党の菅直人元首相(77=東京18区)は5日、東京都武蔵野市で開かれた松下玲子・武蔵野市長の会合に出席し、自身の次期衆院選不出馬を正式に表明するとともに、松下氏を東京18区の事実上の後継者として手続きを進める方針を明らかにした。

一方で、会合後の記者会見では「今この時点ではっきり申し上げられるのは、次期衆院選にこの選挙区(東京18区)から立候補することはない」と述べ、東京18区以外での立候補に含みを残した。

菅氏は1980年の初当選後、43年、14回の当選回数を重ねた。特に厚相時代に対応した薬害エイズ事件や2009年の政権交代、2011年の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に触れ、首相の立場で第1原発を訪れて批判されたことについては「行って良かった」と強調した。

「総理までやらせていただき、その後も10年以上、議席をいただいた。やるべきことは相当程度にやれた。後は後進に譲ってお手伝いする。潮時かなと判断した」と述べた。年内の衆院解散・総選挙は「(可能性は)あまり高くないが一寸先は闇。次の候補者が選挙に出る準備を本格的に始める時間が必要と考えた」という。「松下さんなら国政でも頑張ってくれると確信した」とし、今後手続きを進める考えを示した。

会場では、伸子夫人や立民の蓮舫、辻元清美両参院議員、弁護士の紀藤正樹氏らも見守った。

一方、菅氏はその後の記者会見で、今後の活動に話が及ぶと「この時点で申し上げられるのは、次期衆院選でこの選挙区(東京18区)から立候補することはない」と繰り返し、今後の選挙への立候補を完全には否定しなかった。その上で、これまで日本維新の会を批判してきたことに触れ「大阪維新は認めがたいところがあり、大阪に乗り込んで反維新キャンペーンをやったことがある。(大阪での出馬を)考えているということではない。他(の選挙区)は今はまったく考えていませんが、東京でやらないんだったら…とそういう意味でいろんなことを言っている方はいる」「私は具体的には考えていないが、いろんなことを言ってくる方は、ありがたいことですがいるということは、お伝えしておきたい」と、思わせぶりに語った。

自身が政治活動に関わるきっかけになった故市川房枝さんを「80歳の時、引退されていたのを担ぎ出した」とも語り、「立候補することについて今、聞かれたら、現時点では考えていない」と繰り返した。

一方、松下氏は市長2期目の任期途中での辞任。辞任時期は明言せず「市政に影響が出ないよう調整している」と述べた。「任期途中で辞めることには葛藤があった。申し訳ない気持ちでいっぱいだが、ここ(のタイミング)しかないと判断し新たな挑戦をする覚悟をした。衆院選は難しく、いばらの道になる」とも口にした。【中山知子】