<ダービー>◇1日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳牡牝◇出走18頭
1番人気クロワデュノール(牡、斉藤崇)が勝利した。好位から堂々と抜け出し、王座に返り咲いた。北村友一騎手(38)は大けがを乗り越え、デビュー20年目で念願のダービー初制覇となった。
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2度目の涙はなかった。北村友騎手はダービー初制覇を笑顔で飾った。ただ、その裏側は苦悩の連続だった。過去に4度、大けがで戦線を離脱した。「僕って本当にけがが多いんですよ。何カ所(骨が)折れているんだろうって思うくらいです」。4度目の負傷は21年の5月2日。背骨が8本も折れる重傷だった。
ベッドから補助なしで起き上がれるようになるまで2カ月。その後も半年は体の自由がきかなかった。51キロあった体重は46キロまで激減。復帰まで約1年、どん底の自身を支えていたのはほかならぬ「馬が好き」という純粋な気持ちだった。
「筋肉は全部落ちましたし、復帰できるのか…と思ったこともあります。けど、そこからたくさん助けてもらって、また馬に乗りたいという気持ちだけを持ってリハビリに励みました。けががあったからこそ、人間的にも強くなったし、感謝の気持ちも持てるようになりました」
昨年暮れのホープフルSの勝利騎手インタビューでは自然と涙があふれ出た。いつも冷静で、あまり感情を出すタイプではない。「僕も泣くなんて思っていませんでした」と不意のことだった。「たくさんの方に助けてもらって、G1の舞台に帰ってこられた。そう思うと、自然と涙が出てきました」。信じた先には明るい未来がある。苦難、困難を乗り越えたダービージョッキー北村友一に、もう涙はなかった。【藤本真育】

