現役最年長、17歳馬マイネルバルビゾンが、ついにラストランを迎える。通算283戦目は、27日高知12Rの一発逆転ファイナルレース(午後8時50分発走)。ゼッケン1番をつけ、自厩舎の女性ジョッキー浜尚美騎手とコンビを組む。
今年6月には3着に入り、7月にも5着と掲示板を確保。昨年は連対(2着)を果たすなど、年齢を重ねても毎年のように馬券に絡んできた。通算23勝で、最後に白星を挙げたのは20年4月。そのレースで手綱を取った元ジョッキーの妹尾将充さん(25)に話を聞いた。
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ものすごい豪脚だった。6年経った今でも、あの感触は妹尾さんの心と体に刻まれている。後方2番手で運んだマイネルバルビゾンは、3コーナーすぎから一気に上昇。大きく開いていた先頭との差をぐんぐん詰め、最後は首差かわした。「前が止まって見えました」。当時、馬は11歳。そしてデビュー2年目の鞍上は19歳だった。
アグネスデジタル産駒の牡馬で、2歳秋に中央デビュー。同期同厩にはゴールドシップやジャスタウェイがいる。その後、佐賀や南関東、岩手を経るなどして高知に転入した。そのマイネルバルビゾンには、これまで39人のジョッキーがまたがった。最も騎乗回数が多いのは阿部基嗣騎手の64回。その次に多いのが、妹尾さんの42回だ。
初めてコンビを組んだときから、10歳を超えていた。「すでにおじいちゃんでした。でも気持ちは強い馬だった。負けん気が強く、賢かった」と振り返る。「返し馬やレースではおとなしくて。若手騎手でも乗りやすい馬でした」。
妹尾さんはその後、レース中の落馬事故に遭い、騎手引退を余儀なくされた。車いす生活を送る現在は、高知競馬の職員として、番組編成などさまざまな形で開催に携わる。レース後に騎手たちからコメントを集め、公式サイトに掲載することも業務のひとつ。昨年6月には、初めてマイネルバルビゾンとコンビを組んだ畑中信司騎手の「あと10年やれます」という談話をファンに届けた。ユーモアあふれるそのコメントを、「『畑中さんのほうが、あと10年頑張ってくれ』と思いながら聞いてました」と笑う。
妹尾さんが小学生だったころから、マイネルバルビゾンは走り続けてきた。自身のSNSに「いわゆる大先輩です。おじいちゃんだけど少しヤンチャな可愛い馬」とつづったこともある。ファンからは愛情を込め、いつしか「バル爺」と呼ばれるようになった。負け続けることで人気を得たハルウララとはまた異なるキャラクター。条件がかみ合えば好走し、ファンを驚かせ、沸かせる。走り続けることで認知度を高めた。そしてときおり結果を出すことで、現役であり続けた。
17歳になった今も、パドックで目を引くほど毛づやが輝く。「いい馬体をしていますよね。首も太くて、踏み込みも力強い。走り方も格好いい。さすが元A級馬」と賛辞を送る。そのパートナーが、長い競走生活に別れを告げようとしている。引退レースは記者選抜による「一発逆転ファイナルレース」。白星から遠ざかっている馬が集まる、高知の名物レースだ。実力拮抗のメンバー構成で、どの馬も好走のチャンスがある。
マイネルバルビゾンを最後に勝たせた男-。現時点におけるその称号は、妹尾さんにとって自慢だ。それでも引退レースを前に、心から願う。
「勝ってほしいなあ。バルビゾンがたくさんほめてもらえるといいなあ。ハマちゃん(浜騎手)に期待ですね」
もし勝てば、オースミレパード(16歳)を抜いてサラブレッド最高齢優勝となる(記録が電子管理されるようになった73年4月以降)。
引退後はあしずりダディー牧場(高知県土佐清水市)で余生を送ることになる。妹尾さんは実感を込める。「のんびり過ごしてほしいですね」。無事是名馬。細く長く走り続けたマイネルバルビゾンが、いよいよ、競走馬としてのゴール地点にたどりつく。【奥岡幹浩】
◆妹尾将充(せのお・まさちか) 2000年(平12)12月10日生まれ、広島県出身。高知競馬で19年4月13日デビュー。22年3月、レース中の落馬事故で脊髄を損傷し、24年11月に引退。現在は高知競馬場の職員として番組編成や事務業務に携わり、開催を支える。SEKAI NO OWARIと広島カープファン。
◆マイネルバルビゾン 父アグネスデジタル、母マイネポリーヌ(母の父スペシャルウィーク)▽牡17▽馬主 シグラップ・マネジメント▽調教師 那俄性哲也(高知)▽生産者 ビッグレッドファーム(北海道新冠町)▽戦績 通算282戦23勝▽総獲得賞金 3814万円▽主な勝ち鞍 岩鷲賞(岩手重賞)▽馬名の由来 冠名+絵画の一派

