元モデルの歯学博士・照山裕子さんが、口臭が気になる、歯周病が進んできた…歯と口の悩みなど、皆さんの悩みに回答します。

 Q 10年ほど歯科医院に行っていませんが、機器は変わっていますか。

 

「歯医者さんは痛いことをされる場所」というイメージがあるかと思いますが、麻酔の針は非常に細くなり、表面麻酔のジェルと併用することで昔と比べて刺入時の痛みはかなり軽減しました。針を刺す瞬間だけでなく、麻酔薬が入っていく圧によっても痛みを感じるのですが、注入圧を均等にし、入れるスピードもコントロールできる電動注射器を置いてあるクリニックは増えています。

 現代の歯科医療はMI(Minimal Intervention)といって、「できるだけ歯を削らないためにはどのようにしたらよいか」という理念が主流になっており、無駄に歯質を削らない、抜かないための治療法や技術が日進月歩で進んでいます。ダイアグノデントという虫歯測定器は、レーザーの光を歯面に当てることで虫歯の深さなどを数値で測定します。これによって視診や触診だけに頼らず、本当に削るべき虫歯かどうかの判断ができるというわけです。

 歯周病に力を入れているクリニックでは、位相差顕微鏡が使われていることも多いです。歯垢(しこう)、歯石を取って調べると、細菌の数やその運動率が分かり、治療の結果、菌の勢いが減ったかどうか、その場で分かるようになりました。

 歯科医が拡大鏡(ルーペ)を使用して行う診療はスタンダードになって来ましたが、さらに精密な情報を得たい場合はマイクロスコープもあります。肉眼の2~24倍に拡大することで、ルーペでは確認しにくい場所も広い視野で見ることが可能です。根管治療を中心に、さまざまな手術にも欠かせなくなってきました。

 顎骨の形態、歯根の向き、血管・神経の位置…などを3次元で見ることができる歯科用CTは2011年に一部の症例に限り保険適用での撮影が可能になり、徐々に普及し始めています。短時間のエックス線照射で高画質の3次元(3D)画像が得られ、非常に高い精度で患部の情報を詳細に見ることができます。被ばく量を気にされる方がいますが、東京からニューヨークへ片道、飛行機に乗った程度とされています。

歯科技工の現場ではデジタル化が非常に進んでおり、歯型をカメラで撮影し、コンピューターが設計、短時間で高精度な詰め物・かぶせ物を作製する流れが増えてきています。さまざまな素材やソフトが次々と開発され、今後もますます生産性の向上が図られるかも知れません。

ここでご紹介したのはほんの一部です。最新機器があるかどうかは歯科医院のホームページ等に書かれていますから、どんな分野に力を入れているか、目的に合った機器があるか、クリニック選びの参考にしてみてはいかがでしょう。(おわり)

 ◆照山裕子(てるやま・ゆうこ) 歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。歯と全身の関わりについて幅広く学んだ経験を基に、機能面だけでなく審美的要素にもこだわった丁寧な治療がモットー。分かりやすい解説でテレビ、ラジオにも多数出演している。学生時代はモデル事務所に所属。近著に「歯科医が考案 毒出しうがい」(アスコム)。