<心筋症(6)>

 「心筋症」の治療が「薬物療法」、そしてカテーテルを使った「経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)」など内科的治療の範囲を超えると、患者さんは循環器内科から心臓血管外科へと紹介されます。

 心臓血管外科で行われる治療としては「心臓移植」「補助循環(人工心臓を使う方法)」「左心室縮小形成術」などが行われています。

 心臓血管外科に紹介されても、まだ元気を取り戻せる軽症の患者さんや、60歳を超えてしまった患者さんの場合には、左心室縮小形成術で良くしようと考えています。この手術には「バチスタ手術」「ドール手術」「セーブ(SAVE)手術」があります。

 バチスタ手術は、拡張した左心室の心筋の一部を切除して縫い合わせる手術。左心室を小さくすることで収縮力をアップさせようとするものです。ただ、術後数年での死亡率が高いことがわかり、世界的にほとんど行われなくなりました。

 ドール手術とセーブ手術は有効です。ここではセーブ手術を紹介しましょう。セーブ手術は心室中隔が悪くなった場合が適応。人工血管に使われているパッチを使います。パッチは化学繊維の布で編んだものの外側が、タンパク質でコーティングされています。このパッチを左心室の間仕切りに使って、左心室を縮小させます。この手術の成功率は、極めて高いことで知られています。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)