<たこつぼ型心筋症(3)>

 過度のストレスを受けることで発症する心臓疾患の「たこつぼ型心筋症」。突然の胸痛に襲われ、重症のケースでは突然死することもあります。この疾患は、血液を全身に送り出す心臓の左心室が「たこつぼ型」になり、血液を十分に送り出せなくなるのです。

 ただ、多くの人は「左心室の形がたこつぼ型に変形するなんてことがあるの? 実際にはそれを見ることなんてできないでしょう」と思っていらっしゃいます。しかし、検査をすると、それは分かります。

 患者さんが緊急搬送されて病院に到着すると、心臓では、突然死する患者さんの多い「狭心症・心筋梗塞」の有無を最優先に調べます。心電図、血液検査では、たこつぼ型心筋症ならでの特別な変化はありません。このあたりでは、医師は「狭心症・心筋梗塞だろう」と思っています。これがさらに検査を進め、「心臓超音波(エコー)検査」をすると、たこつぼ型心筋症特有の変化を確認することができます。

 その確認できる変化とは-。心臓の左心室の中央から先端部が、広範囲に収縮が低下していることが見て取れます。こうなると心筋梗塞以外の疾患の可能性が出てくるため、収縮低下の原因を調べるために「冠動脈造影検査」を行う必要があります。その最終確定の検査は、次回に紹介します。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)

 ◆心臓超音波検査 胸部に当てたプローブ(探触子)から超音波を出し、心臓のさまざまな部位に当たって跳ね返ってきた超音波を受信し、形状や動きを画像としてとらえます。これで心臓の状態が分かります。超音波はエックス線とは違って人体に無害です。