腰痛や抜け毛に悩まされている-と言っても、加齢による「オヤジ化」なら仕方ない面もありますが、これが子どもの世界に広がっているとすれば、ゆゆしき問題です

5年ほど前から、子どもたちの運動不足は指摘されていますし、小学生の外遊びの平均時間も、塾通いやスマホでのゲームへの熱中などにより、1日1時間以下と、かなり短くなっているようです。こうした事情からも運動不足による体力低下や動作の発達が問題視されても当然でしょう。

データによると、約30年前の幼児と今の子どもを比べると、「立つ」「投げる」「蹴る」の基本動作で、今の5歳児(年長)は30年前の3歳児(年少)レベル。小学3、4年生は5歳児(年長)と同様だったといいます。それだけ体力低下、動作の発達遅れが顕著なのです。

腰痛に関しては、「ランドセル」も関与しているようです。ランドセルに入れる教科書が分厚くなってきており、その中には重いものも多くなってきています。教科書が大判サイズになり、ページもオールカラーで良質なものが多く、重量も25~30%ほど重くなっているようです。それだけ腰にかかる負担も大きくなっているのです。

抜け毛で悩む子どもが多いと聞きます。10代の抜け毛というと、一部分だけというものが多くて、いわゆる円形脱毛症が多いのですが、これは受験勉強などのストレスが原因と見られています。ストレスは同時に、外遊び時間の減少も手伝って、子どもの頭痛や肩凝りをも招いています。

スマホの使用時間も、子どもの健康に影響を及ぼしています。スマホを連続で2時間以上使用するとかなりの負担となり、目の疲れや視力の低下につながるため「スマホ老眼」と呼ばれる症状を訴えるケースも。データによると、15~34歳で老眼の症状を訴える人は10年に0・3%だったのが、14年には5・1%にまで増えています。

食生活の変化で太りすぎの子どもも増えました。すると、大人の病気と思われた生活習慣病、2型糖尿病に苦しむ子どもたちも増えてきているようです。ゲームや勉強で座り続けているせいで、痔(じ)に悩む子どもまでいるそうで、「おっさん子ども」の増加は、衰えを知りません。

なんとか家族の支えで、子どものオヤジ化を予防してもらいたいです。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。