アテネオリンピック(五輪)では、国民のみなさんの応援を感じながら投げました。試合前に君が代が流れる瞬間、グッとくるものがありました。

初めてプロ野球選手だけで編成されたチームで、注目度も高かったと思います。たくさん連絡をもらいましたし、ギリシャに来てくださった方もいました。当時のメンバーを見渡すと、本当に豪華。普段は敵同士の選手と仲間になって一緒に戦いました。その中に自分がいられることが夢のよう。もちろん苦しかったけど、充実した時間でした。

スタンドの歓声、守ってくれている野手、ベンチも「わーっ!」となると、自分のマックスだと思っていたところから、さらに150%、200%くらい出ていたんじゃないかな。それを引き出してくれるのが五輪の舞台。国を背負う責任感だったんでしょうね。

実は銅メダル、すごく気に入っているんです。ちょうど新しいデザインになったタイミングでした。最近のメダルは装飾されていたり、大きかったりですが、第1回大会が開催されたギリシャらしく、アテネ五輪のものはすごくシンプル。歴史を感じることができて、いいなと思っています。

チームの絆は強かったですね。オフの日には、投手も野手も関係なくみんなで買い物に行ったり、街並みを見たり。パルテノン神殿にも行きました。五輪前には、僕を03年のアジア予選で代表に選出してくれた長嶋(茂雄)監督が倒れられました。大会は中畑(清)ヘッドコーチが代行を務める中で、スタッフも選手も含めて全員が「元気を届けよう。一番いいメダルを獲得しよう」が合言葉でした。ベンチには、長嶋監督の「3」のユニホームが掲げられていて、グラウンドに向かう際に一礼したり「頑張ってきます」と言う選手も多かった。僕はブルペンに行くときに、一礼していましたね。

国を背負って戦う姿は、美しいです。今回のラグビーワールドカップも、日本の試合はリアルタイムで見て、録画してもう1度見ました。大きな男が、プライドをかけてガンガンぶつかっていっている。トライが決まった時は涙が出ました。やはりスポーツの祭典はいいなと思いました。

勝ち負けもあるけれど、人として熱くなる。パワーがわき上がってくる。母国開催の五輪を見るのは楽しみです。代表に選ばれるのは、めったにないこと。その中でも五輪は特別です。ヤクルトからも選手を送り出して、自信を持ってプレーしてきてほしいです。(275人目)