内村航平。五輪は4度目、体操界だけでなく、広く五輪競技の顔としても注目される男は、アスリートがどうすべきか、明確な持論を語った。

「自分自身のために五輪を戦い抜き、良いプレーをすれば、日本中に明るいニュースを届けられる。自分のために精いっぱいやってほしいなと思います」

コロナ禍での開催には賛否両論、反対が多いと自覚している。昨年11月の国際大会で発した「どうやったらできるかを皆さんで考えて、そういう方向に考え方を変えてほしい」というメッセージについて聞かれると、本音を言葉に乗せた。

「言ったことで、開催してもらえるとは思っていない。選手が何を言おうと世界は変わらない。選手はそれぞれができることをやって、日本に勇気と感動を届けることしかできない。僕は正直、そこまで周りの声とか一切左右されない性格なので、変わらずにできると思いますが、全アスリートがそうかと言えば、そうじゃない」

1度は思いを伝え、そして考え抜いたからこその結論。オンラインでの壮行会を「物足りない気がします」とここでも本音ながら、ゆずが歌う「栄光の架橋」に気持ちは高まった。04年アテネ五輪、団体総合の金メダルを獲得したシーンがよみがえる。「体操選手はこの曲を聞くと、やる気になるんじゃないかな」と静かに燃えた。

種目を鉄棒に絞り、4個目の金メダルに挑む。団体には出ないが、初出場の後輩たちに五輪について伝える使命感も持つ。「鉄棒という種目をやり切ることですね」。その姿は、体操競技を超え、多くのアスリートに響くことにもなるかもしれない。【阿部健吾】