東京オリンピック(五輪)・パラリンピック開閉会式を総合統括していたクリエーティブディレクター佐々木宏氏の辞任に関連し、当初の演出責任者だった振付家のMIKIKOさんが26日、ツイッターを更新した。昨年11月に辞任した経緯を説明。開会式の演出を全うしたかった無念さもつづった。

以下全文(原文まま)

 

一連の報道に関しまして

 

一連の報道に関しまして、ただただ戸惑うとともに、一方で何もお答え出来る立場にはないと考え、コメントを差し控えさせていただいておりました。しかし、日々目まぐるしく情勢の変わる中、この問題が長引くことで、選手の皆様はじめ今まさに大会開催に向けて頑張っていらっしゃる方々が集中できない一因になるのであればとても苦しく、やはり私自身の口から思いをお伝えする責任があると考え直し、コメントを発表させて頂くことにしました。

2020年3月24日、新型コロナウイルスの感染拡大により、東京オリンピック・パラリンピックの1年程度の延期が決定しました。

延期前、私はオリンピック開閉会式の執行責任者として、500名近くのスタッフ、キャスト、更にその先にいらっしゃる直接お会いすることは出来なかった数多くの関係者の方々の才能と時間をお預かりしておりました。

その中には渡辺直美さんもいらっしゃいました。

開閉会式の準備も一時停止が告げられ、再開の際は連絡をいただけるとのことでした。

延期から約6カ月後の去年の10月、今後について皆様に何もご連絡できていない中で、これ以上お待たせするわけにはいかないと思い悩み、勇気を出して私から電通に問い合わせを入れました。その際、すでに別の演出家がアサインされ、新しい企画をIOCにプレゼン済みだということを知りました。11月になって新しい企画、新しい演出家のもとで改めてオファーを頂きましたが、その企画に一から関わっていない以上、責任が取れるものではありませんでした。形は変わったとしても従前の制作物で活かせる部分は有効活用すべきだと考えておりました。また、これまでの企画案に尽力してきていただいた皆様との関係で道義にも反していると感じました。世界中がコロナの恐怖と悲しみに包まれている中で開催されるオリパラのセレモニーのあり方を考えた時に、このような疑問を持ちながら参加するわけにはいかない、と悩み抜いた上で辞任の決断に至りました。

「もし時間が巻き戻せるなら、このコロナ禍のセレモニーで、何を伝えるのか、何が出来るのかを全員で話したかった」

オリンピック・パラリンピックのプロジェクトをサポートして下さっていたある尊敬するスタッフの方の言葉です。

延期前まで精魂込めてセレモニーに向き合ってきた方々としっかりコミュニケーションをとり、無駄のない前向きな新しい企画を全員の力を合わせて一緒に作りたかったです。

実際に手を動かして下さっていたスタッフ、キャストがしっかり輝いて、評価されるセレモニーにしたい。

4年に一度のこの舞台の為に、命を燃やしてこられた世界中のアスリートの方々を激励するセレモニーにしたい。

世界中からここ東京に集える奇跡を讃え合いたい。

その思いを胸に、2016年のリオ閉会式からこの案件に関わってきた人間として、最後まで成し遂げたいと何とか踏み止まってきましたが、叶いませんでした。

この思いは今後の作品で形にしてお返しします。

私たち世代が未来に残さないといけないものは何なのかを真剣に考えます。

伝えたい人に届く方法を自分なりに前向きに探し続けて参ります。

個人として、組織の一員として、あるいは組織そのものとして、それぞれのお立場での正義があるのだと思います。

もうこれ以上の発言はせず、目の前の一つ一つの仕事に心を込めて向き合っていくことが、私にとっての正義です。

ご理解頂けると幸いです。

もし東京オリンピック・パラリンピックが開催されるのであれば、日本が世界に誇れる、子どもたちに誇れる、開催できた全てのことや全ての人に、感謝を届けるセレモニーになって欲しいと心から願います。

そして、国籍、性別、年齢、容姿に関係なくそれぞれが持って生まれた個性を尊重し喜び合える世界になることを祈っています。

なお、体調に関してはおかげさまで快方に向かっております。

ご心配の声を沢山頂いたのにも関わらず、すぐにコメントが出せず申し訳ございませんでした。

まだまだ寒暖差の激しい日々が続きますが、皆様何卒ご自愛ください。

2021年3月26日 MIKIKO