日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督(64)が、負けられないW杯最終予選初戦のUAE戦へ向け、ビッグサプライズで選手の士気を高めた。8月31日に埼玉スタジアムでの公式練習で最終調整。冒頭、選手をピッチ上に集めると、リオデジャネイロ五輪のメダリストのメッセージが寄せ書きされた日の丸を見せ、五輪の日本選手団に続く活躍を求めた。
埼玉スタジアムで行われたUAE戦の公式会見。ハリルホジッチ監督は、白い布のようなものを手にし登壇した。質疑応答が始まり、UAEから来た記者から、準備期間の短さについて聞かれた。「私も欧州と日本を行き来して、体調を保つ難しさを知っている」。そう言って眉をひそめたが、次の瞬間「サポーターも後押ししてくれるし、それから…」と白い布を一気に広げた。
それは同監督の大きな体もすっぽり包めそうなほど、大きな日の丸だった。「五輪代表のメダリストがサインをくれました。これは美しいプレゼント。本当にモチベーションが上がっている」。晴れやかな表情で、ぐいと胸を張った。
この日の丸は、UAE戦の中継をするテレビ朝日が準備した。指揮官は「ぜひ使わせてほしい」と大喜びで受け取った。合宿初日から、スタッフがミーティングのたび「使いますか?」と聞いたが「まだ早い」と制した。ためて、ためて、UAE戦前日の最後の練習開始直前。ピッチ上に選手を集めて示した。
国民からの期待を背負って、国際舞台に打って出るという意味では、オリンピアンとハリルジャパンは「同志」と言える。メダリストたちは「執念」「自信」「油断大敵」など修羅場をくぐったからこその言葉をつづった。次は君たちの番だ-。選手たちを鼓舞するために、指揮官にとってこれ以上の演出はなかった。
ホームアンドアウェー方式になった98年大会予選以来、最終予選初戦で敗れたチームが突破した例はない。ハリルホジッチ監督は「そのデータは把握しています」と表情を引き締めた。「難しい試合になるのは分かっている。でも相手にとっても難しい試合になる」と不敵に語る。分析を重ね、対策を練ってきた。ミーティングを重ねて、選手に落とし込んだ。万全の準備は、メダリストからのメッセージというサプライズで仕上げられた。【塩畑大輔】
◆W杯予選のUAE戦 94、98年大会の予選で1勝3分け。98年フランス大会の最終予選では同組で、97年9月にはアブダビで0-0で引き分けた。岡田監督に交代して迎えた10月26日の国立競技場でのホーム戦は前半3分にFW呂比須のゴールで先制したが、追いつかれて1-1の引き分け。B組3位だった日本は自力2位の可能性が消滅し、試合後にはサポーターが会場を包囲。選手は罵声を浴び、カンや生卵が投げられた。5試合連続無得点のカズが群集に向かって「ちょっと来い」と叫ぶと興奮したサポーターが門を乗り越えるなど、過去例がないほどの騒動が深夜まで続いた。
その後、日本は2連勝でB組2位となってアジア第3代表決定戦へ進出。イランを3-2で下す「ジョホールバルの歓喜」で、初のW杯出場を決めた。
<メダリストの言葉>
【柔道】
▼海老沼匡(男子66キロ級銅)応援してます。
▼大野将平(男子73キロ級金)集中・執念・我慢。
▼永瀬貴規(男子81キロ級銅)感動する試合を見せてください。
▼ベイカー茉秋(男子90キロ級金)金メダル。
▼羽賀龍之介(男子100キロ級銅)強い日本!!
▼原沢久喜(男子100キロ超級銀)がんばれ!!
▼中村美里(女子52キロ級銅)全力で頑張って下さい!!
▼松本薫(女子57キロ級銅)油断大敵。
▼田知本遥(女子70キロ級金)執念。
▼山部佳苗(女子78キロ超級銅)攻めろ!!
【卓球】
▼水谷隼(男子シングルス銅、団体銀)自信!!
▼丹羽孝希(男子団体銀)いつも見ています、頑張ってください!!
▼吉村真晴(同)楽しんでプレーを!!
【競泳】
▼瀬戸大也(男子400メートル個人メドレー銅)やればできる!!
【シンクロ】
▼中牧、中村、吉田、乾、三井、箱山、丸茂、小俣(団体銅)粘り強く攻めのプレーを期待しています!!全力で応援しています!!
【レスリング】
▼太田忍(男子グレコ59キロ級銀)日本らしい攻めのサッカーを!
▼樋口黎(男子フリー57キロ級銀)執念。
▼登坂絵莉(女子フリー48キロ級金)執念。
▼川井梨紗子(女子フリー63キロ級金)熱く、冷静に、大胆に。
【陸上】
▼荒井広宙(男子50キロ競歩銅)楽しんで!!
【バドミントン】
▼奥原希望(女子シングルス銅)自分達を信じて!!
【重量挙げ】
▼三宅宏実(女子48キロ級銅)応援を力に!!みんながついてます!!
【体操】
▼白井健三(男子個人跳馬銅、団体総合金)楽しかったと思える90分にしてください!!
▼内村、山室、加藤、田中(団体総合金)スーパーゴール期待してます!
【カヌー】
▼羽根田卓也(男子カナディアンシングル銅)夢を見せてください。