アルゼンチン代表として14年W杯ブラジル大会で準優勝し、バルセロナの一員としては2度の欧州チャンピオンズリーグ(CL)制覇など13のタイトルを獲得したMFハビエル・マスケラーノ(31)が、自分のサッカー人生を変えたスライディングタックルについて語った。英ガーディアン紙(電子版)が報じた。

 マスケラーノはリバプールで活躍した後、10-11年シーズンからバルサに加わった。だが加入して5~6カ月たったころ、「オレは長くはここにいないだろうと思った。オレのスタイルはまるでバルサに合っていなかったから」と感じていたという。

 それが、たった1度のスライディングタックルが運命を変えた。11年3月8日に行われた欧州CL決勝トーナメント1回戦第2戦・アーセナル戦でのこと。

 後半ロスタイムに入り、バルサは3-1とリードしていた。この時点で2戦合計でも4-3と1点勝ち越しており、あと数分しのげば準々決勝進出となるところだった。

 だが次の瞬間、アーセナルMFウィルシャーのスルーパスが、FWベントナーの足元に通った。GKと1対1となり、失点は不可避に見えた。決まれば3-2。2戦合計4-4で、アウェーゴール数で上回るアーセナルがベスト8へ進み、バルサは敗退となる場面だった。

 だがマスケラーノはベントナーのトラップが少しだけ大きくなったのを見逃さなかった。背後から全速力で駆け戻り、スライディング。見事ボールを奪って、CL敗退の危機を救った。

 「あれでオレは(バルサの一員として)認められた。もしベントナーのトラップが完璧で、オレの反対へドリブルしていたら…。う~ん、どうなっていたか分からないけど、幸運にもタックルが決まって、オレたちは最終的にCLで優勝することができたんだ」。

 このプレーは、マスケラーノの「絶対にあきらめない心」があったからこそ生まれたものだ。バルサに入団した際も、同じ守備的MFのポジションにはブスケツという絶対的な存在がおり、マスケラーノは控えの立場だった。

 「ブスケツのポジションを奪うなんて不可能だ。チームの他の選手を見ても、ブスケツの代わりになるヤツなんて誰もいない。だからオレはバルサには長くいないと思った」。

 だが、そのまま引き下がる選手ではなかった。こん身のスライディングタックルで、マスケラーノは別のポジションで定位置を奪った。センターバックとして、今ではチームに欠かせない存在だ。

 「あのタックルがすべてを変えた。オレは定位置をつかんだ。今でもレギュラーの立場を守り、プレーのレベルを上げようと努力しているよ。でもバルサのことだから、先のことは分からない。要求も大きいし、彼らは(オレの代わりに)誰かを獲得したければ、誰だって取れるからね」。

 マスケラーノはそう話すが、「ヘフェシート(スペイン語で小さなボスの意味)」のニックネームを持ち、強烈なリーダーシップで世界最強軍団の守備陣を支える男の代わりが、そうそう見つかるとは思えない。

 【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)