現在行われている欧州選手権で、初出場のウェールズ(FIFAランク26位)があれよあれよという間にベスト4に進出した。準々決勝では、FIFAランク2位のベルギーと堂々渡り合い、3-1と逆転勝ちした。
現時点で世界最高の選手と言っても過言ではないFWギャレス・ベール(26=Rマドリード)がチームをけん引しているのはもちろんのこと、MFアーロン・ラムジー(25=アーセナル)FWハル・ロブソンカヌ(27=レディング)DFアシュリー・ウィリアムズ(31=スウォンジー)ら脇役(と言ったら失礼だが)たちがキラリと光る働きを見せ、決してベール1人のチームではないというところを証明した。
そんなウェールズの快進撃を天国で喜んでいると思われるのがガリー・スピード前監督だ。現役時代は同国代表MFとして通算85試合に出場。引退後はカリスマあふれる若き指導者として代表監督のバトンを託された。だが11年11月、自宅ガレージで首をつって亡くなった状態で発見された。まだ42歳だった。
ウェールズがベルギーに勝利した夜、インターネットのSNSはスピード前監督に関するコメントであふれた。
「この勝利をガリー・スピードにささげる」
「このチームの基礎は彼によって作られた。今いる場所から笑顔で見てくれているでしょう」
「多くのウェールズファンと同様に私も今夜ガリー・スピードを思い出した。いつまでも愛しているし、あなたがいなくてとても寂しい」
「スピード前監督も今夜ほほ笑んでくれているはず」
「彼もウェールズのことを誇りに思っているだろう」
実はスピード前監督の死後、後任監督人事がうまくいかない中「それなら自分が」と就任したのが現在のクリス・コールマン監督(46)だった。
スピード前監督とは友人関係にあり、チーム作りや戦い方などを知り尽くしていた。何より、道半ばにして死を選んだ友の苦しみを、だれより理解しようとしていた。
英テレグラフ紙(電子版)によるとコールマン監督は「スポーツ科学が登場して何年も経つが、ウェールズにはそれがまったくなかった。それを導入したのがガリーなんだ。そこから我々の新しい戦い方が始まった。彼のことは毎日、頭の中に思い出すよ。死ぬ直前までウェールズが世界で勝ち上がっていく夢について語っていた」と話しているという。
そのスピード前監督の夢がついに現実のものとなった。ラムジーは「きっと誇らしげに見守ってくれていると思う」という。準決勝ポルトガル戦でも、天国からの温かいまなざしを感じながらウェールズの選手たちは戦う。
【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)

