サッカーW杯ロシア大会の日本代表で、カンボジア代表の実質的な監督に就任した本田圭佑(32=メルボルン・ビクトリー)が、10日に国際親善試合マレーシア戦で“監督デビュー”した。本田がカンボジアのサッカー界へ与える影響はどれほどのものなのか。11年にカンボジア国籍を取得し、同国代表として16年リオ五輪のマラソンにも出場したタレント猫ひろし(41)に聞いた。【取材・構成=松尾幸之介】

ニャンということだ!! ついに本田が現役選手ながら、カンボジアで監督として指揮を執った。猫は驚きつつも“本田なら納得”と言わんばかりの表情を浮かべた。

カンボジアではキックボクシングと並んでサッカー人気は高いといい「ケーブルテレビがつながっていて、チャンネルが100ぐらいは映る」ことから国民は日々、セリエAなどの海外リーグも目にしている。当然、ACミランなどで活躍した本田の知名度は抜群。本田が約2年前からカンボジアの世界遺産アンコールワットで有名なシェムリアップにあるクラブチーム、ソルティーロ・アンコールFCの経営に乗り出したことから、その人気はさらに高まった。「今までは有名な日本人は中田(英寿)さん、本田さん、(AV男優の)加藤鷹さんだった。3大アスリートとして(笑い)。でも今は本田さんですよね。そして少し離れて長友選手、香川選手という感じかな」と解説した。

小学生時代はサッカー部だった猫自身も15年11月にプノンペンで行われたW杯ロシア大会2次予選の日本-カンボジア戦を現地観戦し、その人気を肌で感じた。「本田選手が途中出場で出てきて1点決めたんですよ。一緒に見ていたカンボジアの友達は『本田選手が決めなかったら大変なことになってた』と。普通は相手に決められたら悔しがるのに『やっぱり本田はすごい』となっていた。それぐらいの人気です。今回の監督就任も新聞の1面になっていました。すごいですよ。僕もリオ五輪出場が決まった時に1面になったんですよ。でも、そんなに話題になってなかった」と舌を巻いた。

そんな本田へ、カンボジアを知る先輩としてのエールを送った。国民性については「みんなすごく親日で、良くも悪くも、のんびりしていて優しい人が多い。マラソン大会が朝6時30分スタートなのに6時10分になっちゃうとか、ちゃんと時間通りに始まったのは見たことない」。食生活については「どうしても水が日本みたいに清潔ではないので、生水は飲まないこと。現役選手なので練習する時もあると思いますけど、本田さんのクラブチームがあるシェムリアップは僕もよく練習していて、アンコールワットの周りをランニングしているとよく犬が追いかけてくるので、気をつけてほしい。国際レースでも普通に犬が追ってきて、猫と犬のデッドヒートになる」と笑わせた。

23年には東南アジアのオリンピックと呼ばれる東南アジア大会が初めてカンボジアで行われる。そこへ向けて国を挙げてスポーツ強化に取り組んでいるところだといい「サッカーでもメダル獲得を目指して一丸となってやっているので、そういう時期に本田さんがA代表の監督になってくれて、サッカーのレベルが上がっていけばいいですよね」と期待を込めた。

まだ本田と対面したことはなく、マレーシア戦当日は「日本で出稼ぎ中」だった。同じカンボジアで戦う仲間は大歓迎で「これからカンボジアって何ですかって聞かれたら、“ケイスケホンダ”って答えます!」。共に20年東京五輪出場も目指すアスリートとして、猫が金狼との共演を心待ちにしている。

◆猫(ねこ)ひろし 1977年(昭52)8月8日、千葉県生まれ。大学卒業後、03年に芸能界デビュー。「ニャ~」の猫ポーズや「ポーツマス、ポーツマス」のギャグで人気者になる。テレビ番組の企画をきっかけにマラソンに目覚め、08年にマラソンデビュー。11年11月にカンボジア国籍を取得し、16年リオ五輪に同国代表として出場。2時間45分55秒で完走した。ベストタイムは15年東京マラソンの2時間27分52秒。07年に一般女性と結婚し、11年に第1子となる女児が誕生。趣味は格闘技観戦。147センチ、45キロ。血液型A。