全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)は来月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。トヨタ自動車九州は、世界陸上マラソンを欠場した今井正人(31)が11月末にレース復帰。そのレースで今井らしい走りを取り戻し、本大会でのチームの上位入賞も見えてきた。

 今井が不調を感じたのは7月後半の合宿中だった。頭痛や背中の痛みが激しく、39度の熱も出た。診断は髄膜炎。2週間の入院治療が必要だと告げられ、世界陸上への道が閉ざされた。「体力が落ちていることを察知できなかった」と、自身に腹が立つと同時に、サポートしてくれた人たちに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

 箱根駅伝5区の活躍で“山の神”と称されたが、マラソンで実力を発揮するまでには時間がかかった。08年に北海道マラソンが初マラソン。その後、世界大会(世界陸上、五輪)の選考レースには5回出場したがいずれも満足いく結果は出せなかった。ようやく今年2月の東京マラソンで2時間7分台を出し、30歳で世界陸上のマラソン代表を勝ち取った。やっと世界に挑戦できる、という段階での宣告に無念の思いが募った。

 だが、世界陸上欠場を決めた時点で、リオ五輪に向けてどうしていくかに気持ちを切り換えた。8月中旬に退院して、9月上旬にジョギングを開始。「絶対に焦らない」と自分に言い聞かせ、慎重に復帰の道を探った。チームの練習に合流したのは11月。この程度で、という練習で筋肉痛が出ることもあったが、「走ることができているという充実感」もあった。11月23日の九州実業団駅伝出場は見送ったが、そのレースを見たことで試合モードに切り換えられた。1週間後の熊本・甲佐10マイルでは46分36秒(国内の部3位)と本来の力が戻ってきたことを確認できた。

 ニューイヤー駅伝では最長区間(22キロ)の4区で2013年から区間賞、区間2位、区間2位と快走を続けている。「自分の良さを出せるのが駅伝。それをマラソンにつなげていきたい」。まだ走る区間は未定だが、元気になった姿を、そしてリオ五輪に挑戦する過程を上州路で見せられる状態になった。

 チームは13年、14年と連続2位に入ったが昨年は9位。2年前に3区を走った三津谷祐、前回3区を走った小西祐也といった主力選手が相次いで引退。新たに3区、4区を担える人材を育てている最中だ。甲佐10マイルでは今井から3秒以内で押川裕貴(25)渡辺竜二(27)広末香(22)がゴールした。箱根で活躍した大津顕杜(24)はマラソンを走れるだけの力を付け、外国人選手のカレミ・ズク(21)は甲佐10マイルの国際の部で2位に48秒差をつけて圧勝した。

 チームを率いるのはバルセロナ五輪マラソン銀メダルの森下広一監督(48)。独特の勝負哲学に則った区間配置をする。今年は過渡期という位置づけで、目標は「上位入賞」。数年後の優勝を実現するために、アッと驚くような区間配置が見られるかもしれない。