パリ・オリンピック(五輪)スケートボード男子パークの私の中での勝者は、最年長51歳で初出場したアンドルー・マクドナルド(英国)だった。圧巻は予選の3回目。高さのある離れ技(トリック)をすべて決めると、最後はボードに乗ったまま着地。子どものように体全体で喜びを表現した。
結果は18位。決勝の8人には残れなかった。それでも息子のような10代の選手たちに果敢に挑んだ彼のトリックは格好よかったし、何より生きる喜びにあふれていた。五輪は若者だけが楽しむ舞台じゃないぞ。そう主張しているようにも見えた。
報道によると彼は94年にプロに転向し、世界最高峰の「Xゲーム」で23度も表彰台に上がった往年の名選手で、6月の五輪予選最終戦で15位に入り、20枠の代表の座をつかんだという。21歳でプロ転向して実に30年。武道で言えば名誉10段の達人といったところだろう。
性別や老若男女を問わず、自由に楽しむスケートボードの価値観を彼はまさに体現していたのだが、それはこの競技に限らず、スポーツのあるべき姿でもあるのだと思った。
五輪を目指すアスリートの多くは、体力や気力の衰えや、目標を達成したことで燃え尽きて引退を選ぶ。でも本来スポーツは何歳になっても楽しめるもの。30歳そこそこで辞めてしまうなんてもったいない。トップ戦線で戦えなくても、続けることで自分を高められるし、新たな発見だってあるはずだ。
04年アテネ五輪の男子アーチェリーで銀メダリストを獲得して“中年の星”と呼ばれた山本博(61)を思い出した。彼は還暦を過ぎた今も、世界を目指して戦い続けている。再び五輪に出場するために、右肩の修復手術も受けた。
22年11月のナショナルチーム選考会でパリ五輪への道が閉ざされた後、彼は私にこう語った。「王貞治さんの“努力は必ず報われる。もし報われない努力があるならば、それはまだ努力と呼べない”という言葉を思い出しました。何歳まで若者とハンディなしで戦っていけるのか。追求していきたい」。その時の彼の表情が実に楽しげで、アーチェリーを心底楽しんでいるように見えた。
マクドナルドも同じだと思った。共同通信によると試合後、彼はこうコメントしている。「年齢に関係なく、スケートボードが楽しいということを伝えたかった。私はすべての時間を楽しんでいる」。彼にとってスケートボードは生きる手段ではなく、生きることそのものなのだと思った。【首藤正徳】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「五輪百景」)







