11月7日から、東京オリンピックの聖火の巡回展示が始まった。全国で最初の展示となったのは、私の出身県である石川県。初日の展示会場は、金沢市の「いしかわ総合スポーツセンター」で行われ、私も待ちに待った聖火が見られることを楽しみに、足を運んだ。


(左から)森ひかる選手、松本薫さんと一緒に
(左から)森ひかる選手、松本薫さんと一緒に

来年の東京五輪開催に向けて着々と準備が進む中、まだ新型コロナウイルスの心配は続いている。そんな中で、私が最も不安に思っていたのは、1年延期された五輪に対して県民の皆さんの関心がどれくらい残ってくれているのかという事だった。

しかし、そんな心配は全く必要なかった。会場に入ると、広いアリーナに設置されたたくさんのイスはあっという間に満席になっていた。


聖火の巡回展示が石川県からスタート
聖火の巡回展示が石川県からスタート

イベントでは、石川県指定無形文化財である「御人乗太鼓(ごじんじょだいこ)」が披露され、柔道でロンドン五輪金メダリストの松本薫さんや、東京五輪の出場が内定しているトランポリンの森ひかる選手らも登場し、会場は大いに盛り上がった。

私も2人との久々の再会に心が弾んだ。


石川県指定無形文化財の「御人乗太鼓」
石川県指定無形文化財の「御人乗太鼓」

聖火は11月9日に、私の故郷である小松市へと移動した。そこでも歓迎イベントが開催され、私も地元出身のオリンピアンとして参加した。

会場には小松市出身選手たちの日本代表ユニホームや競技道具などが展示され、会場の後方ではオリンピック・パラリンピック種目であるトランポリンやカヌー、ボッチャなどの体験も出来るようになっていた。

そこでも、私の予想をはるかに超える反響だった。

平日の昼間の開催で、短い時間だったにも関わらず、外まで続く長蛇の列。ギリシャで採火され、日本にやってきた聖火を一目見ようと約2500人もの市民の方々が訪れてくれたのだ。聖火と共に写真を撮ったり、各ブースでもたくさんの笑顔を見ることができ、聖火に秘められたパワーに驚かずにはいられなかった。


地元の小松市でもイベントを開催
地元の小松市でもイベントを開催

10日までの4日間で、石川県内7カ所を巡った聖火。テレビなどでは見たことがあっても、間近で見られる機会はそうそう無い。開催国だからこその特権であり、とても貴重な経験である。

今回、小さくも神秘的で力強い聖火を実際に見て、来年の五輪開催を想像し、期待に胸が膨らんだ方も多いのではないだろうか。私自身も、やっと東京五輪の開催が現実味を帯びてきたことに明るい気持ちになった。たくさんの勇気や感動を与えてくれるオリンピック・パラリンピック。選手たちだけではなく、見る人、支える人、応援する人が一丸となって成り立つ世界最大の祭典である。

暗いニュースばかりに目を向けるのではなく、「明るい未来に向かって歩んでいこう」と思わせてくれた瞬間だった。(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)