3月に静岡で行われた東京五輪代表2次選考会に出場した園田(撮影・平山連)
3月に静岡で行われた東京五輪代表2次選考会に出場した園田(撮影・平山連)

アーチェリー東京オリンピック(五輪)代表入りを逃した園田稚(わか)(18=足立新田高3年)が、敗戦を糧に一皮むけようとしている。史上最年少の16歳で日本代表に名を連ね、17歳で世界選手権に出場した逸材。88年ソウルに出場した中込恵子以来となる現役女子高生での五輪代表入りを目指したが、2次選考会で敗退した。

選考会終了後、人目をはばからず涙した18歳は、尊敬する12年ロンドン女子団体銅の早川漣を追い掛け、追い越したいと胸に秘め練習に打ち込んでいる。

2次選考会から半年が経ち、24年パリ五輪に向けて歩み始めた園田は確かな成長を遂げている。8月の記録会では女子リカーブの部(72射、720点満点)で677点。自己記録を10点更新、さらにジュニア女子日本記録を塗り替えた。充実ぶりは表情にも現れている。口元を緩ませにこやかな姿が戻っていた。

3月に静岡で行われた2次選考会では違った。持ち味の早打ちは途中から影を潜め、最終選考に進める5位と6点差で競り負けた。競技後は口数が少なく、涙にぬれた顔はショックを隠しきれない様子だった。アーチェリー界の期待を背負ったニューヒロインは、当時どんな思いで戦っていたのか。選考会終了後も気になっていたことを本人に聞いた。

園田が真っ先に挙げたのは、かつて経験のないプレッシャーだった。昨年6月の世界選手権に出場したとはいえ「オリンピックが懸かる舞台は、今までにない緊張感でした」。駆け付けた大勢の報道陣、各選手から伝わる強い意気込み。強風という悪条件も影響して思い通りにいかず、途中から気持ちが折れた。

早川(右)の後を追う園田(撮影・平山連)
早川(右)の後を追う園田(撮影・平山連)

そんな時に声を掛けてくれたのが、かねて慕う早川だった。「漣さんは『大丈夫、まだいける』『風がこう吹いているから…』と何度も話し掛けてくれて、あきらめモードの自分を鼓舞してくれました」と振り返る。

エリートアカデミーに在籍する園田は、早川と同じくNTC(ナショナルトレーニングセンター)を拠点に練習している。園田が点数が伸び悩んだ時にはアドバイスをしてくれたり、選考会後には「ゆっくり休んで」と励ましてくれた。一緒に東京五輪の舞台に立つことが、いつしか夢になっていた。かなえることができず、選考会直後は悔しさで何もできなかった。

選考会の反省からコンディションの良しあしにかかわらず、一定の状態を保って練習ができるよう心掛けている。いかに平常心で的と向き合えるかが鍵になる。「10点狙うと決めたら入れる。そうじゃないと勝てません」。

24年パリ五輪への抱負を尋ねると「これまで韓国が金メダルを多く獲得してきましたけど、パリでは自分が金メダルを取ります」。高々に宣言した言葉を4年後に現実のものとするため、18歳は奮起する。今度こそ自分が主役になるために。【平山連】(日刊スポーツ・コム/スポーツコラム「WeLoveSports」)

オンライン取材で半年前の2次選考会の心境を語る園田(撮影・平山連)
オンライン取材で半年前の2次選考会の心境を語る園田(撮影・平山連)