2013年の全米シニアプロで優勝し、日本男子初のメジャー制覇を果たした井戸木鴻樹(59=小野東洋)は、箱根にいた。シニアツアーの「ノジマチャンピオンカップ箱根シニア」(15~16日、神奈川・箱根CC)出場に備えての練習ラウンドをするためだった。

松山が日本人初のマスターズ制覇で日本中を揺るがしたが、8年前には井戸木がシニアとは言え、全米プロを制し話題となった。「ぼくはシニアで松山君はレギュラーだし、ましてマスターズ。素直にたたえたい。でも、僕もメジャーに勝った誇りは持っています」と言った。

もちろん、マスターズ最終日、4月12日(日本時間)の早朝はテレビにかじりついていた。

「インに入って、逃げたい、攻めたい、守りたい。そんな気持ちが交錯していたと思います。しかし、松山君はそのバランスを保つ集中力があった。自分の時もそうだったが、いろんな雑念が入ってくるが、その雑念を培った技術で払いのけたように見えた」と勝因を分析した。

井戸木が全米プロシニアを制した時は、神がかり的なパットを連発したが「松山君も要所、要所でいいパッティングをしていた。いや、パットだけでなく17、18番のドライバーショットは完璧だったし、グリーンをはずした時のアプローチもかみ合った。自分もそうだったけど、心技体がそろった時に勝てるのです」と振り返った。

実は井戸木は、13年に全米シニアで勝って以来、日本シニアツアーでも勝利がない。「今年で60になるけれど、またあの優勝争いの雰囲気を味わいたいですよ。松山君が大いに刺激になりました」。8年前の快挙により、日本シニアツアーでは永久シード選手になっているが「もう1度、力で優勝してシードを勝ち取りたい」と松山フィーバーの陰で、井戸木はひそかに闘志を燃やしている。

【82、87、89年マスターズ取材=元ゴルフ担当・町野直人】

◆井戸木鴻樹(いどき・こうき)1961年(昭36)11月2日、大阪生まれ。アマチュア時代に日本ジュニア優勝。83年にツアーデビュー。90年関西プロで初優勝し、ツアー通算2勝。167センチ、62キロ。

(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)