10大会ぶり11度目出場の城東(徳島)を率いたプロップ三木風芽(ふうが)主将(3年)は必死に涙をこらえた。
「10年ぶりの花園で、勝手が分からず、バタバタとしました。でも、ウオーミングアップでは全員で声を出して、1年で一番いいアップができました」
力の差を見せつけられた相手をねぎらい、スタンドに目を向けると、自然と感情があふれ出た。「お世話になった人の顔がたくさん見えて…」。最後の整列まで気丈にチームを引っ張った男が、先頭で泣いた。
その列の途中に、CTBの弟海芽(かいが、1年)がいた。166センチ、81キロの兄に、弟は167センチ、75キロ。体形はそう変わらないが、グラウンドを走り回る弟を、必死にスクラムを組みながら支えてきた。この日も何度もトライを奪われたが、激しく息をしながらチームを鼓舞した。その姿を見つめる弟は「ラグビーでも私生活でも、本当に信頼できる兄です」とひそかに尊敬してきた。
三木が切り開いた道を、弟が追ってきた。同じ徳島ラグビースクール出身。城東への進学を勧めたことは1度もなかったが、弟は「一緒に兄と花園に行って勝ちたい」と中学生の頃に思うようになった。花園から9年も遠ざかっていた城東に、進学を決めた。
後輩であり、弟でもある海芽に対し、三木は厳しく接した。練習が終わり、自宅に帰ると「勉強せえよ」とあえて注意した。県内屈指の進学校であり、就任3年目の富加見(ふかみ)泰輝監督(30)の教えは「学校生活あっての、ラグビー」。三木も練習から自宅に戻ると、眠い目をこすりながら毎日3時間半程度、机に向かってきた。それでも「周りは1日6時間とか勉強している」と焦りが募る毎日。だからこそ、時に厳しく海芽に声をかけた。
「1、2年生の時に、どれだけ勉強をするかが大事。練習がしんどいのは僕も分かる。でも、できるだけそれを伝えて(弟を)楽にさせてあげたかったんです」
15年春、三木の入学を機に城東は変わった。当時の3年生はわずか4人。自然と8人程度の同期が1年から試合に出場し、多くの経験を得た。先輩の真面目さを見習い、よりこだわったチーム作りに着手した。富加見監督が会議で練習に来られない時も、ウエートトレーニングの手を抜く者はいなくなった。
筑波大進学を目指す三木は、センター入試に向けての猛勉強を開始する。感慨に浸る間もなく離れるラグビーに対し「1~2年通して、ここまで作り上げられたという自負がある。今日もやれることはやった。僕のキャプテンとしてのあり方が、反省だっただけです。キャプテンとしての最後の役目は、感じたことを伝えることだと思う」。反省を口にしながらも、指揮官からは「本当に真面目で、みんなを一生懸命引っ張っていけるキャプテンでした」とねぎらわれた。
無念の思いを、次は海芽ら下級生が受け取る。弟は目を腫らしながら、兄を横目に誓った。「この経験を生かして、もっと強くなりたい。次はここで勝てるチームになって、帰ってきたいです」。開会式後の第1試合。わずか3時間半の聖地で得た、かけがえのない経験を次の道で生かす。【松本航】


