男子エペでも番狂わせが起きた。優勝候補のド本命だった国内ランキング1位の見延和靖(33=ネクサス)が、準々決勝で敗れた。伏兵の古俣聖(22=本間組)を相手に13-15で8強にとどめられた。

過去3年で2度の優勝を誇り、東京オリンピック(五輪)代表入りを確実にしている山田優(26=自衛隊)が欠場した中、2年ぶり3度目の優勝を目指すも届かず。初戦もリードを許してからの逆転勝ちと、序盤から厳しい戦いが続いていた。

18-19年シーズンには日本人初の世界ランキング年間1位になった。団体戦では、主将として今年2月のワールドカップ(W杯)バンクーバー大会(カナダ)銅メダル獲得に貢献。個人戦でも、ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ3月のグランプリ(GP)ブダペスト大会(ハンガリー)で5位。世界相手に入賞はしていた。それでも今年の全日本では波乱に巻き込まれた。

試合後は「負けた直後なので『悔しいです』という言葉しか出てこない」と第一声。「自粛期間中に衰えてしまった体力を戻し切れなかった。試合勘も、1回戦はフワフワしていて(敗れた)2回戦で少しはよみがえってきたけど、スイッチが入るのが遅かった」と悔やんだ。

一方で「この半年間、こういった試合の緊張感や高揚感を味わえていなかったので。まずは開催してくれた方々に感謝したい。この試合を通じて、やっぱり『僕が生きていく場所はピスト(競技コート)上にあるな』と、あらためて感じられたので。悔しい、次は負けたくない、という気持ちも久々に沸いてきた。来年は東京五輪。次は言い訳ができないので、しっかり金メダルを勝ち取りに行きたい」と前を向いた。

新型コロナウイルス対策として、試合前に検査(スマートアンプ法)を受けるなど特別だった大会については「これまで緊張したことないような感覚、時間だった。みんなの中でも味わったことないような緊張感が出ていたけど、陰性と確認されてからはノビノビできていた。慣れない経験ではあったけど、これがNEW STANDARD(新基準)になっていくんだろうな」と振り返った。

今後の大会は未定。再び流動的な生活に戻るが「自分で求めていくこと、できることを探していくことが大事になる。まだ練習に制限はかかると思う。これまで通りの練習はできないと思う。一方で、まだまだ本来の状態を取り戻せていないので、東京五輪に向けて高めていくしかない。僕個人の目標としては『世界最強のフェンサーになる』がある。これは試合があろうがなかろうが関係ない。自分と、どう向き合って突き詰めていくか」。

不完全燃焼も、覚悟を決め直し、将来への課題を再確認できた1日となった。【木下淳】