仙台大明成(宮城)が3年ぶり6度目の全国制覇を達成した。“八村塁2世”といわれる2年生エース、山崎一渉(いぶ)が、最終第4クオーター(Q)残り5秒で決勝のジャンプシュートを決め、初優勝を狙った東山(京都)を72-70の逆転で下した。チームはこれで準々決勝から3試合連続で残り1分を切ってから勝負を決めるミラクルV。山崎は両チーム最多25得点、10リバウンドでベスト5にも選ばれた。

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ボールを受けた山崎一がミドルシュート放つ。リングに嫌われた。諦めない。自らリバウンドを拾ったジャンプシュートがリングに吸い込まれた。残り5秒。東山・堀のシュートが外れるのと同時に勝利のブザーが鳴った。第3Qを終え13点のビハインド。追いつき、勝ち越し、追いつかれた激戦にピリオドを打ったのは、やはりエースだった。

涙を浮かべ、両拳を突き上げ、3年生に頭をたたかれ、山崎一は言った。「3年生とやるのは最後。決めるしかないと思って打ちました。信じられない」。開始直後に3ポイントとドライブインを立て続けに決めたが、その後はリングに見放された。外から打っても、ドライブしても決まらない。30本のシュートでリングに沈めたのは10本だったが25得点。199センチの体で東山の留学生、206センチのムトンボと体をぶつけ合い10リバウンド。ダブルダブルでチームを引っ張った。

OBのNBAウィザーズ八村塁に憧れて明成に進み、背番号8を引き継いでいる。ただ、全国50校を超える勧誘を断ったのは、それだけが理由ではない。松戸一中3年時の関東大会でチーム73点中67点を1人で挙げたが敗退。1人では勝てないことを学び、チームプレーの重要さ痛感した。だから、これまで多くの名選手を育てた佐藤監督の下でバスケットを追究すると決めた。

「彼が入学してから少しだけ成長したのは、ここ一番でシュートを決められるようになったこと。50点も60点も取らなくていいんです」と佐藤監督。百戦錬磨の71歳も試合後には目を潤ませた。1年生で出場した昨年は準々決勝で北陸に敗退。八村を擁したチームが達成した3連覇再現の夢が崩れ、悔し涙に暮れた。それから1年。得意の外角シュートに加え、インサイドでの強さも身につけてチームを頂点に導いた。「シュートが入らなくてもやれることがある。来年も優勝したい」。連覇を誓う山崎一の顔が引き締まった。【小堀泰男】

◆山崎一渉(やまざき・いぶ)2003年(平15)7月10日、千葉県松戸市生まれ。小学4年生の時に松戸ミニバスケットスポーツクラブに入り、センター、フォワード、ガードでプレー。松戸一中では全国大会でベスト16。身長は小学5年生で170センチ、中学入学時に179センチあった。父がギニア人、母は日本人でバスケット経験がある。中学校の部活動引退後は千葉ジェッツU15チームに所属していた。元U16日本代表。199センチ、90キロ。

◆男子ベストファイブ 越田大翔、山崎一渉、山内ジャヘル琉人(以上仙台大明成)、ムトンボ・ジャン・ピエール、米須玲音(以上東山)

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