新たな夢は世界1位-。
21年東京オリンピック(五輪)で金、銀、銅メダルを獲得した伊藤美誠(23=スターツ)が8日、世界選手権団体戦(16~25日、韓国・釜山)日本代表の公開練習に参加した。1月の全日本選手権まで続いたパリ五輪選考レースの最終順位は3位。今月5日に発表された五輪の団体戦要員となる代表3枠目からも外れた中、91年以降の世界ランキング制度で日本人初となる同1位を目指すことを公言した。
現在のランキングは早田ひな(23=日本生命)の5位に次ぐ、日本勢2番手の10位。新たな目標へ再び走り出す。
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伊藤の表情は穏やかだった。取り囲む記者を180度見渡す。身ぶり手ぶりを交えながら口にした。
「世界ランキング1位になることは、日本人で誰も成し遂げていない。五輪とは違って一発の大会ではなく、ランキングは積み重ねたものなので、そういう目標を立てました」
パリ五輪を目指すにあたっては、日本初のシングルス金メダルを掲げてきた。その夢はかなわなくなった今、新たな目標へ進む覚悟を示した。
五輪のシングルス代表2枠は、選考レース上位の早田と平野美宇(23=木下グループ)の2人。残る団体戦の3枠目は「私か張本選手の2択」と冷静に見つめていた。選考レース4番手ながら、今年の全日本選手権シングルスで決勝へ進出した張本美和。急成長する15歳の姿に、自身の過去を重ね合わせた。
「私も15歳で出させてもらいました」
16年リオ五輪団体戦では、五輪卓球史上最年少で銅メダルをつかんだ。その経験があるからこそ、公式発表前に自身の落選を伝え聞いた時も「張本選手は今後引っ張っていく存在になっていくので、(五輪に)出ていかないといけないな、って思いました。15歳で経験することは大事。張本選手なら納得という思い」と受け止めた。
立つことのない今夏のパリの舞台。リザーブ(補欠)での帯同について「東京五輪の時は早田選手がすごく支えてくださったので、そのおかげで私自身も頑張れた」と感謝した上で、「私は向かないかな。多分(パリへは)行かないかなと思います」と他の選手に役割を譲る姿勢を示した。
今は国際大会での躍動を見据える。その先には世界ランキング1位の夢が続く。全日本のシングルスで6回戦で敗退となった1月26日の夜。あらゆる感情があふれる中、新たな夢を思い描いた。
「もちろん、思い出すというのもあります。こうすればよかったなと悔しかったですし、落ち込んだところも結構ありました。でも、五輪に出場できなくても、試合に出続けることはできるなと思いました。世界大会にいっぱい出て、試合を通じて成長することもできる。大きな大会が多かったので、ラッキーって思いました。五輪に出るような選手たちが大きな大会にも出場するので、いつも以上にレベルも雰囲気も高まる。私もその場に入り込めると思います。私も勝っていきたいと思いました」
現在、世界ランキングは4位までを中国人選手が占めるが、伊藤は4年前に現行制度では日本勢最高の2位に浮上した経験もある。「(中国人選手に)勝たないと1位はない」と固く誓った。
何よりも、心強い仲間たちがいる。この日の練習。午前9時半過ぎに卓球場へ足を踏み入れると、先にコートで汗を流していた同学年の早田から笑顔で手を振られた。伊藤も気付くと、手を振り返した。
「全日本が終わってから初めて顔を合わせても、普段と変わらない。みんなで話し合いながら試合に臨みたい」
いつも通りの歓迎に気持ちも高まった。約17分におよんだ取材では記者1人1人の目を見ながら、明るい表情で答え続けた。
新たな夢へ。この団体戦は、その1歩目となる。【藤塚大輔】
◆日本のパリ五輪出場権獲得条件 日本は男女ともに、世界選手権団体戦の8強入りで五輪団体戦出場枠(3枠=シングルス代表2枠を含む)が確定する。今大会で出場権獲得を逃した場合でも、3月のチーム世界ランキングなどで出場16チームが決まる。日本は現在、チーム世界ランキングで男子3位、女子2位と優位な位置につけている。
◆卓球の世界ランキング制度 現在の世界ランキングは91年から導入された制度を基本としており、国際大会の1年間の活躍度に基づいている。日本女子の最高位は20年伊藤美誠の2位。以前の1928年開始の制度では、国際卓球連盟(ITTF)が世界選手権の成績を主として世界ランキング委員会により決定していた。そこでは日本勢の男女複数人が1位となっていた。


