ドーピング報道に揺れるフィギュアスケート女子でロシア・オリンピック委員会(ROC)の15歳、カミラ・ワリエワが10日、首都体育館の練習用リンクで行われた午前の練習に姿を見せた。

ロシア有力紙コメルサントは9日、複数の消息筋の話として、ワリエワがドーピング検査で陽性反応を示したと報じた。8日に開催予定だった団体戦のメダル授与式が急きょ中止された問題の原因とされ、大会前に提出したサンプルから禁止薬物のトリメタジジンが検出されたと報道された。ワリエワは7日までの団体戦でSP、フリーで鮮烈な五輪デビューを飾り、ROCの金メダルに貢献。前日9日の練習には姿を見せず、動向に注目が集まっていた。

この日の練習には多くのロシアメディアも詰め掛け、練習開始前にはチーム関係者に取材を求める声も響いた。ワリエワはフリーの曲かけ練習で2度転倒をする場面もあった。練習後、報道陣から「今の気持ちはどうですか? 少なくとも練習はどうでしたか?」と聞かれたが、首を振り続けたまま、思い詰めた表情で無言で取材エリアを通り過ぎた。ROC勢はトルソワは参加したが、シェルバコワの姿は不在だった。

タス通信によると、ロシア・フィギュアスケート連盟は「(ワリエワの)五輪に参加する資格は停止されていない」とコメント。ロシア・スポーツ省も「コメントするのは時期尚早だ」としている。IOCはこの日の定例会見でアダムス広報部長が、「ドーピングの問題というのは推測に過ぎない」と言及を避けた。女子の個人戦は15日にSPが行われる。

 

<ドーピング騒動>

◆異変の始まり 8日のフィギュア団体のメダル授与式が突然中止になったのが始まり。IOCのアダムス広報部長は9日午前、理由について「法的な問題」と言葉を濁した。

◆メディア報道 英紙ガーディアンが8日夜、団体金のROCに、ドーピング検査で競技力向上の効果がない物質で陽性反応を示した選手がいたと報じた。ロシア有力紙コメルサントは9日、ワリエワが陽性反応と報じた。

◆要保護者 今回の騒動でネックの1つと考えられるのが、ワリエワの年齢。世界反ドーピング機関(WADA)の規定によると、16歳未満の選手は柔軟な対応をとるべき「要保護者」という位置付けになる。違反があった場合の氏名の開示も義務ではない。

◆新たな打撃 ロシアは自国開催の14年ソチ冬季五輪で国ぐるみの組織的なドーピングスキャンダルが発覚。検体のすり替えやデータ改ざんなど醜聞にまみれた。今大会も国としての参加は禁じられており「潔白を証明した選手」のみがROCとして参加。今回の陽性が事実なら、制裁の実効性が問われる事態。