B組1位の世界ランキング6位、日本代表「スマイルジャパン」が、準々決勝でA組3位ながら、世界3位と格上のフィンランドと対戦する。

初の準々決勝で、勢いに乗ってメダル獲得を目指す日本。

サッカーの辛口評論家として知られる、セルジオ越後氏(日刊スポーツ評論家)は、日本初のアイスホッケーのプロチーム、HC栃木日光アイスバックスを運営する株式会社栃木ユナイテッドの代表取締役を務めている。

アイスホッケーにも精通しているセルジオ越後氏から、愛情たっぷりのエール。いつものサッカーの鋭すぎる舌鋒(ぜっぽう)とはまた違い、あふれんばかりのアイスホッケー愛を詰め込んだ評論をお届けする。

北京のスマイルジャパンに届け-。

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決して恵まれているとはいえない環境で、当初の目標だった1次リーグ突破を、それも1位で達成した選手たちに、これ以上ない賛辞をおくりたい。マイナー競技で注目されず、プロとして生計を立てることもままならない現状を考えると、彼女たちの努力や犠牲、情熱には頭が下がるばかりだ。

私は現在、HC栃木日光アイスバックス(旧古河電工)のシニアディレクターで、アイスホッケーには、16年前からかかわってきた。1970年代、ブラジルから日本に来た時、NHKでアイスホッケーのリーグ戦中継があったが、サッカーの日本リーグ中継はなく不思議に思っていた。けれども、そういう私が今は、アイスホッケーチームの経営を考える立場になったのも、不思議な縁だね。

カナダや米国には女子のプロリーグがあり、フィンランドにもセミプロリーグがある。ロシアはプーチン大統領がアイスホッケーを楽しむ映像を流すなど、素晴らしい環境で選手たちが技術を磨いている。しかし日本はアマチュアリーグで、選手たちはそれぞれ仕事を持っていて、練習が第1の選択肢ではない。その中で、筋トレなどで鍛え、体格差を埋める努力を惜しまなかった選手たちには、尊敬しかないね。残念なのは、魅力的な表情がマスクで隠されていること。せっかく「スマイルジャパン」というのに、彼女たちの笑顔が伝わらないことは、残念でならない。

アイスホッケーはあまり点が入るスポーツではない。日本はGKを中心に堅い守りのチームをつくったことが、今回の1位通過につながった。準々決勝で2強のカナダ、米国を避けられたことは大きいね。

フィンランドは強いけれど、流れによっては互角に戦えるんじゃないかな。GKを中心に、守って守って守り倒して、パワープレーで先制すれば、勝つチャンスはあるはず。

日本は欧米選手に比べて体が小さい。アイスホッケーは、競り合った時に体が大きい相手がペナルティーを受けることが多いといわれている。これまで日本の得点は、ペナルティーを受け、相手の人数が少なくなった隙を突いたものが多い。フィンランド戦も同じことが言えるだろう。先行逃げ切りで、なんとかもう1勝してほしいね。

最後に、これだけはぜひ伝えたい。日本は女子スポーツがあまり注目されない。女子サッカーはワールドカップ(W杯)で優勝したが、今のWEリーグはあまり注目されていない。東京オリンピック(五輪)で銀メダルを取った女子バスケもすでに忘れられているような感じもある。ソフトボールだってそうだ。

今回の女子アイスホッケーも、もしメダルが取れれば盛り上がるだろうけれど、すぐまた忘れられるかもしれないという心配がある。これからは企業に頼らず、各自治体と地域住民が関心と愛情を持って、女子スポーツを盛り上げ、育ててほしいと、切に願う。

(日刊スポーツ評論家)