ノルディックスキー複合の全日本選手権優勝経験がある小山祐(33=岐阜日野自動車)が9日までに、日刊スポーツの取材に応じ、北京オリンピック(五輪)で話題をさらっているジャンプスーツ規定違反問題について「オリンピックのような大会で規定違反が相次ぐのは珍しいです。違反は違反なので仕方ないが、厳格にやりすぎると、試合自体をぶち壊してしまいます」と私見を述べた。

7日に行われた新種目のジャンプ混合団体で、1番手の高梨沙羅(25=クラレ)が1回目をスーツの規定違反で失格になった。ジャンプの世界では度々起こる「スーツ規定違反」だが、今回は高梨だけではなかった。4カ国5人が失格となり、各国から不満が相次いだ。

選手たちはなぜスーツにこだわるのか。

より高く飛ぶ上で揚力を得るためだ。生地の性質や縫い方によっても通気性は変わる。小山は「トップ選手であれば同じサイズのスーツを2、3着以上は遠征で持って行きますが、何試合か着たら新しいものに替えていく。生地がへたってしまうと、受ける揚力も減ってしまうからです」。神経質な選手は遠征中も肌身離さず携帯するほど。違反にならないギリギリを攻めることは「飛距離を5、10メートルも伸ばすことにつながる」と指摘した。

その上で、今回のスーツ規定違反問題について、20年以上の競技歴があり現役で活動する小山は「あくまで一般的な大会でのやり方」と留意して言及。高梨の規定違反が発覚した競技後の抜き打ち検査について説明した。

「(抜き打ち検査は通常)別室に連れて行って1対1で検査するシステムですが、はたして誰が、何人呼ばれたのか分かりません。今回で言えば、例えば優勝したスロベニア、あるいは開催国の中国は検査の対象になったのか。検査対象者のうち、どれだけの人が違反にならなかったのか。全容は分かりません」。

今回の一件で世間の反応は、高梨へ同情を寄せる声が相次いだ。競技界隈で当たり前とされてきた常識だったが、小山自身も今一度考えるきっかけになったという。

それでも「失格者をあぶり出すために、検査が行われているわけではありません」ときっぱり。20年以上前と比べものにならないほどルールが厳格化しているのは出場選手をおとしめるためではなく「安全性と公平性を期すため」から。

現時点でまだ具体的な改善策は自分の中でも見つかっていないというが「公平性を担保しながら、選手が気持ちよく競技に打ち込める環境が大事」と話していた。【平山連】

◆小山祐(こやま・ゆう)1988年(昭63)8月3日、飯山市出身。98年長野五輪に魅せられ9歳でスキージャンプを始め、自然とノルディック複合競技に転身。飯山南高-早稲田大学入学後、現在は岐阜日野自動車スキー部に所属。ノルディックスキー複合の全日本選手権、オフシーズンはトレイルランニングにも参戦している。