5種目に出場する「オールラウンダー」の高木美帆(27=日体大職)が37秒12の自己ベストで銀メダルに輝き、1500メートルの銀に続く今大会2つ目のメダルを獲得した。通算では5個となり、夏冬の五輪を通じて日本女子最多記録(柔道の谷亮子)に並んだ。金メダルは37秒04のエリン・ジャクソン(29=米国)。郷亜里砂(34=イヨテツク)が37秒983で15位、2大会連続金を目指した小平奈緒(35=相沢病院)は38秒09で17位だった。

4組目でバネッサ・ヘルツォーク(オーストリア)と並び、アウトから飛び出した。推進力ある大きな滑りで先行し、力強くゴール。37秒12を記録すると、ガッツポーズを見せた。後続の11組で登場した選手たちの記録を次々と退け、最終的にエリン・ジャクソンに首位を逆転されたものの表彰台を守った。

高木美は「ベストを出して渾身のレースができた。自分の中でうれしいし、驚いている。(500メートルに出場するか)迷いがあったが挑戦して良かった」と喜びをかみしめた。

女子500メートルの出場は3度目の五輪で初めて。500メートルを含めた5種目への出場は、88年カルガリー大会、92年アルベールビル大会の橋本聖子以来となる。橋本はカルガリー大会は5種目すべてに入賞。アルベールビル大会では3種目で入賞を逃したが、1500メートルで冬季五輪の日本女子初の銅メダルを獲得している。

高木美は前回大会の4種目から今回、500メートルを増やしたことに注目を集めたが「何か1つに絞る方が、自分のスケートで目指すゴールに逆に遠回りになる」と、何ら特別なことをしているつもりはない。高木美にとってゴールとは「スケートを速く滑る」という点に尽きる。

多種目チャレンジを始めた当初、周囲から「無理はするな」と忠告を受けていた。ソチ五輪のメダル0個を受け14年に創設されたナショナルチーム。翌年、招かれたヨハン・デビッドヘッドコーチからも当初は、種目を絞る方針を示された。

それでも高木美はオールラウンダーにこだわる。「私はできる限り全部やっていきたいと思っていたので、それが自分にとってベストだと証明する努力や、結果を残すことに力を注いだ」と振り返り、「その結果が今」と語った。それを有言実行した。

18年平昌五輪で1000メートル銅、1500メートル銀、団体追い抜きで金メダルを獲得。同3月に開催された短距離から長距離までの4種目で争う世界選手権オールラウンド部門でも、日本勢初優勝を飾った。20年には同スプリント部門(500メートル、1000メートルを2本ずつ)も制している。

今大会は出場5種目すべてに入賞し、メダルも獲得するという偉業が現実的となった。3000メートルは6位、1500メートルで銀メダル、そしてこの日の500メートルも銀メダル。既に団体追い抜きでも4強入りしており(15日に決勝)、残すは17日の1000メートルのみ。日本スポーツ界のレジェンド橋本聖子もできなかった記録が達成されそうな勢いだ。

 

◆夏季、冬季五輪を通じて日本女子個人の最多メダル獲得 高木美帆が5個目のメダルを獲得。これは、夏季五輪の柔道で、谷亮子が獲得した5個に並ぶ日本女子が五輪で獲得した最多メダル数。高木美は18年平昌五輪で金、銀、銅、それぞれ1個ずつの3個を獲得。今五輪で1500メートルの銀で、冬季の日本勢では最多となる4個目のメダルを獲得していた。4個は、夏季のレスリングで伊調馨、吉田沙保里がいる。伊調馨は、4個のメダルが全て金。

世界の女子では、夏季の体操でラリサ・ラチニナ(旧ソ連)が獲得した18個が最多。冬季では距離で15個のメダルを獲得したビョルゲン(ノルウェー)がいる。男子では、夏季の競泳で、マイケル・フェルプス(米国)が獲得した28個が、男女を通じて最多である。