2020年7月24日の東京五輪開幕まであと3年を切った。3年前特集の第2回も、前回に続きビートたけし(70)が五輪を熱く語る。テーマは聖火リレーと開閉会式。聖火リレーはトーチではなく、みこしを担いで運び、それをそのまま聖火台にする斬新なアイデアを披露した。【三須一紀】


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 「オリンピックは末期状態」と厳しかった前回のインタビュー。もめ事ばかりが注目され、時には政局の道具に使われることもあった。五輪、スポーツが大好きな、たけしだからこそ真逆の言葉で活を入れた。残り3年で東京が日本が五輪で輝くためにも―。

 生粋の江戸っ子はべらんめえ調で五輪を斬るが、頭の中はアイデアでいっぱいだ。来月、国際オリンピック委員会(IOC)にコンセプト案を報告する聖火リレー。世界的映画監督でもあるたけしはトップクリエーターとして斬新な発想を持っていた。

 たけし 聖火台は、はじめからそこにあるのが間違いで、聖火台自体が走ってくればいいんだよ。三社祭みたいにみんなが担いできて、全国各地走ってきたら相当な火だよ。あんな棒(トーチ)にくっつけてもしょうがないよ。聖火台が走って来て、座ったところが聖火台だよ。逆転の発想で考えた方が良い。


●点火は豊洲のベンゼン


 建築中の新国立競技場の設計図には聖火台の設置場所が含まれておらず、一時問題になった。その後、東京五輪の開会式を計画する演出チームと相談し、設置場所を決めることとなった。そこを逆手に取り、日本の祭りには欠かせない「みこし」で聖火を運び、全国を回る。「ワッショイ !  ワッショイ ! 」とのかけ声で大会への機運が高まり、日本ならではの光景とともに、開会式を迎える。全国津々浦々を回ったみこしがそのまま、和風の新国立にマッチングした聖火台となるという。

 夏に行う日本の五輪にふさわしい夢プランを披露したかと思えば、たけし節もさく裂した。

 たけし アテネの太陽の光から採火するが、リレーの時に燃えてる火は違うだろ。発火点以外は全部別物。豊洲のベンゼンでも持って行って点火しても聖火だろ。新国立以外に豊洲に聖火台造って燃やしたらなかなか良いベンゼンの使い方だろう。ケネディの墓みたいに永遠に燃えている。豊洲問題も解決だ。


●五輪道路に出店


 東京都の小池百合子知事が五輪3会場見直し問題に続いて計画を中断した、豊洲移転問題を皮肉った。小池氏は都議選告示の直前だった6月20日に「築地・豊洲併用案」を打ち出し、現在、関係者の混乱に拍車が掛かった状態。

 たけし 豊洲のベンゼンで燃えている聖火を別のものにも活用しちゃえばいい。築地と豊洲を結ぶ五輪道路(環状2号線)に出店つくって、さんまやサバを焼いちゃったりなんかして。そうすりゃ築地も豊洲も大もうけだ。


 3年前の本特集1回目のインタビューでも語っていたが、20年東京大会の開閉会式の演出チームに参画したい思いは健在だった。〝キレイな包装紙〟だけでくるんだようなセレモニーにはしたくない―。終戦から約1年5カ月後に東京・足立区で生まれ、17歳で64年東京五輪を経験した、たけしだから清濁併せのむ東京の開会式を表現したい思いがある。

 たけし 12年ロンドン五輪の開会式で産業革命の歴史からやったんだから、東京五輪も日本の歴史から始めよう。B29の空爆から始まって、焼夷(しょうい)弾を落とされて。イタイイタイ病だとか、水俣病だとかの公害も…。

 せっかく五輪に向けて建て直すことになった新国立競技場の設計も、演出家不在で決めてしまったことを、嘆いている。

 たけし 新国立の設計をすると同時に演出家を決めていたら聖火台をどこに造るかも相談できたし、演出に邪魔になる柱の位置とかも相談できた。演出によってはこの柱はだめだよというのがあるのに、もう何も言えない。

 日本の最新の技術力を世界に発信するプランも温めている。

 たけし 日本はIT技術もすごいし、ホンダのASIMO(アシモ)とかロボット技術もあるから、開閉会式のマスゲームも全部ロボットでやりたい。音楽も全部打ち込み。


●「破壊と創造」の開会式


 たけし映画にも見られる「破壊と創造」を折り込んだ演出プランも披露した。

 たけし ゴジラが出て来て、マスゲームを襲ったときに競技場の上からデカイ宇宙船が現れる。その船がゴジラを倒し、新国立に着陸する。はしごを下ろし、競技場の地下に待機している選手たちが宇宙船の中から出て来るように見せる。そして入場行進が始まる。閉会式は逆で選手たちが宇宙船に乗るように見せて、ふたが閉まって飛んでいくように帰って行く。SFのようで面白いかなと思う。

 08年北京五輪はチャン・イーモウ氏、12年ロンドン五輪はダニー・ボイル氏と、開催国を代表する映画監督が開会式の演出を手掛けた。たけしは3年前にも「東京じゃ俺に決まってるだろう」と話していた。

 現在、大会組織委員会では開閉会式のコンセプトを話し合う有識者懇談会を随時開催。20日の第2回会合では、式典を取り仕切る監督を決める意見交換も始まった。資質については「協調性がありマネジメント力がある人」などの意見が出たという。

 総監督を置くのか、五輪・パラリンピックの開閉会式にそれぞれ監督を置くのかも未定だが、年内に打ち出すコンセプトの次は、いよいよ監督の選定。世界的な映画賞を数多く受賞している、たけしの参画はあるのかは注目の的だ。


<「3年目の浮気」替え歌>たけしはインタビューの最後に、色紙に「3年目の浮気」の替え歌をしたためた。開幕まで3年と迫りながら問題山積の準備状況を「大目に見てよ ! 」と書いたが、本心は「開き直るその態度が気に入らない」のだろう。「末期状態」と五輪を評したのも、東京大会の成功を願うからこそ。誰もが納得し、喜ぶ大会が開催できなければ「両手をついて謝ったって許してあげない」かもしれない。


(2017年7月26日付本紙掲載)

日の丸に書き込むビートたけし
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