ラグビーは2019年W杯だけじゃない !  男子7人制日本代表は、正式種目に採用された16年リオデジャネイロ五輪で4位入賞を果たし、20年東京五輪でのメダル獲得を目指している。課題の「選手確保」の打開策として、今年6月には日本協会が鶴ケ崎好昭(27=パナソニック)と初めて7人制の専任契約を締結。環境整備と並行しながら強化を進めている。


男子セブンズ日本代表をけん引する坂井克行(左)と鶴ケ崎好昭(撮影・狩俣裕三)
男子セブンズ日本代表をけん引する坂井克行(左)と鶴ケ崎好昭(撮影・狩俣裕三)

 鶴ケ崎は7人制の専任契約について「ラグビー人生をかけた決断」と言った。ルール上はトップリーグなど15人制の試合にも出場は可能だが、15人制をプレーする時間は大幅に少なくなる。それでも、後ろ向きな気持ちは一切ない。「15人制を諦めたと思われるのはいやだし、自分にとってすごくポジティブな選択。7人制を広めたいし、東京五輪はそれができるチャンス。専任選手がもっと増えてくれれば」と話した。

 高校からラグビーを始め、東海大2年時に初めて7人制の代表に入った。魅力は「攻防が激しく、トライもビッグタックルも多いところ」。15人制ではWTB、CTBとしてプレーするが、マルチな働きが求められる7人制では185センチ、93キロの体を生かしてプロップを務める。リオ五輪は直前に代表落ちし、悔しい思いも経験した。「15人制より下という見られ方をするが、同じ日本代表としてプライドを持っている。東京五輪で結果を出して、ラグビーをやっている子供たちに夢を与えたい」と力を込めた。


<坂井「違う競技 15人制早く見切り付けて」>

 7人制日本代表の中心選手で、リオ五輪にも出場した坂井克行(29=豊田自動織機)は、早期のメンバー固定が東京五輪でのメダル獲得につながると力説。19年W杯があることを「ある意味ではデメリット」とし、「本音は20年を目指す選手には早く15人制を見切ってほしい。同じラグビーだが、やはり違う競技。サッカーの本田選手がフットサルにいってもすぐに活躍できるとは限らない」と思いを述べた。

 一方で、19年W杯があることでの相乗効果にも期待した。リオ五輪では、前年の15年W杯で日本が強豪南アフリカを破ったことが追い風になったとし「強い相手に勝てば、ラグビーへの価値観そのものが変わると感じた。あの試合で、自分たちも善戦で満足していてはいけないと思った」と振り返った。東京五輪は32歳で迎える。7人制を引っ張るベテランは「自分は体も小さいし、15人制だけをやっていたらもう引退していたかもしれない。東京は大きな節目。何としてもメダルを取りたい」と誓った。

練習中、選手を集め話をするダミアン・カラウナヘッドコーチ(中央右)
練習中、選手を集め話をするダミアン・カラウナヘッドコーチ(中央右)

<7人制ラグビー アラカルト>

 ◆歴史 1883年スコットランド南部のボーダーズ地方で誕生。財政難に悩まされていたクラブを救う資金調達のため、15人制より実施が簡単な7人で行うラグビーが考案された。日本では1930年に初めて学士ラガークラブ主催の大会が神宮球場で開かれた。 ◆主要大会 1993年に国際ラグビーボード(現ワールドラグビー)主催の7人制世界一を決める「W杯セブンズ」の第1回大会が行われた。日本はこれまで6大会すべてに出場。1999年に、世界10都市を回るサーキット方式で年間王者を決める「ワールドシリーズ」がスタート。常時出場可能な「コアチーム」は15チームで、年間最下位チームは昇格大会優勝チームと入れ替わる。

 ◆ルール フィールドは15人制と同じ。試合時間は7分ハーフの14分でハーフタイム2分。不当なプレーの一時退出(シンビン)は2分。基本的な競技規則は15人制と同じだがスクラムは1列になった3人ずつで行われる。ポジションはFW3人とBK4人が主流。1日に2~3試合行われる。

 ◆魅力 試合時間が短いことから、15人制より番狂わせが起こりやすい。エンターテインメント性が高く、試合中に音楽が鳴らされ、ファンがテーマに合わせた衣装を着たりとお祭り色が濃い。

 ◆五輪 2016年リオ五輪から正式種目に採用。12チームが3組に分かれて1次リーグを行い、日本は優勝候補ニュージーランドを破るなど4位入賞。金メダルはフィジー、銀は英国、銅は南アフリカだった。