夏冬合わせて4347人いる五輪日本代表の名鑑が日本オリンピック委員会(JOC)などの協力で出版文化社から発売された。データの入ったDVDで検索すると、さまざまなことが分かる。競技別、出身都道府県別などで「オリンピアン」の実態に迫ってみた。


<出身県別オリンピアン>

 夏季大会でみると、最も多くのオリンピアンを出しているのは東京都。人口が多いから当然だが、457人は2位大阪の倍以上。ともに幅広い競技で活躍。3位神奈川、4位静岡、5位兵庫と、ほぼ人口の多さに比例して代表も多い。大都市圏以外で健闘しているのは、山下泰裕ら柔道の金メダルが多い熊本で99人、レスリングや体操などで金メダルの秋田で66人など。

 冬季大会では北海道が圧倒的に多くて414人。冬のオリンピアンが全907人だから、ほぼ2人に1人は道産子になる。2位は長野の104人、3位は東京と新潟の46人だから偏りが大きい。北海道の夏冬合わせて520人は、東京の503人を上回る。

 夏冬で団体競技も含めても金メダルがないのは鳥取と沖縄だけだが、夏冬合わせたオリンピアンの人数も鳥取が21人、沖縄が19人で46位と47位。出場選手を育成して増やすことが、金メダル獲得の近道かも。


<競技別オリンピアン>

 競技別では予想通りの結果が出た。1位は水泳で531人。競泳は366人だが、飛び込み、水球、シンクロを合わせると500人を超す。続くのは、日本が初参加した1912年から夏季全大会に出場している陸上で496人。「陸上と水泳は五輪の華」と呼ばれる通り、この2競技で夏季大会代表3444人の3割近くを占めている。

 意外なのは3位のサッカー。68年メキシコ大会の銅メダル以降28年のブランクがあるが、男女でコンスタントに出場を続けたバレーボールよりも多い。23歳以下という年齢制限が設けられ、大会ごとに入れ替えとなることも多い理由だ。

 冬季競技ではスキーが多くて323人。アルペン、ノルディック(ジャンプ、複合、距離)、フリースタイル、スノーボードと種目が多いため。続くのはスケートで、フィギュアとスピード、ショートトラックを合わせて268人。スキーとスケートで、冬季オリンピアンの3分の2になる。


<大学別オリンピアン>

 大会出場時の所属でもっとも多い大学(大学院や助手、教員なども含む)は、早大で176人。日大が137人、日体大が101人で続く。かつては強化拠点が大学で、卒業すると競技を離れる選手も多かった。上位に中大や明大、慶大など歴史ある名門大学が並ぶのは、古くからスポーツが盛んだったから。64年東京大会当時は、世界レベルの大学部活動も多かった。冬季大会でも、同じような顔ぶれが上位に並ぶ。

 筑波大は東京高等師範学校、東京教育大と名前を変えながら51人の学生を五輪に送った。国立大としてはもちろん最多。また、戦前はスポーツの強豪として知られていた東京大学の学生も、20人がオリンピアンになっている。

 関東勢以外で最上位は中京大。陸上、競泳、体操などが強い。関西勢で唯一ベスト10に入ったのは近大。半分以上は競泳で、近大付高、近大付中を含めると、さらに数は増える。


<所属別オリンピアン>

 社会人オリンピアンの所属で最も多いのは、自衛隊だ。64年東京五輪を目指した強化のためにできた体育学校、札幌に拠点を置いて多くの冬季競技選手を輩出してきた冬季戦技教育隊も含めて夏冬で166人が代表になっている。レスリング、重量挙げ、射撃で金メダルを獲得。銃の練習ができるため、近代5種、バイアスロンの選手も多い。警察も多く61人、レスリングや柔道など格闘技、自衛隊と同様の理由で射撃の代表選手も多く輩出する。

 かつて多かったのは、銀行。体操の紀陽銀行、大和銀行など36人の銀行員が出場している。以前は少なかった民間企業も、近年は多くのオリンピアンを抱えている。代表的なのはミキハウス。競泳、柔道、卓球などメダル有望競技のアスリートは「プロ選手」として企業に所属しながら大学などで練習している。


<組織委員会にも4人>

 20年東京五輪・パラリンピック組織委員会でも、オリンピアンが活躍している。スポーツディレクターの室伏広治氏(陸上)、広報局次長の柳館毅氏(競泳)、スポーツ局競技運営部の江上綾乃さん(シンクロ)、広報部戦略広報課の伊藤華英さん(競泳)の4人。2度の五輪を経験した伊藤さんは「オリンピアンとしての経験を組織の中で生かしながら、東京大会をつくりあげていきたい」と話している。