東京オリンピック(五輪)は、空前の金メダルラッシュになる。新型コロナの影響で史上初の1年延期、さらに緊急事態宣言下で異例の開催となった今大会。「メダルどころじゃない」という声ももっともだが、やはり日本勢が活躍すれば盛り上がる。日程別に有力選手を並べてみると「毎日が金メダル」。ステイホームで迎える大会だからこそ、カレンダーを手に選手の活躍を楽しもう。

※上段から競技、種目、選手名


日本が今大会で掲げた目標は「金メダル30個で世界3位」だった。新型コロナ禍での開催で、JOCの山下泰裕会長も「数にはこだわらない」と言ったが、あえて予想するなら30個は可能といえる。過去1大会の最多は16個、倍近い成績は不可能にも思えるが、30個を裏付ける理由もある。

金メダルラッシュを支えるのは、開催都市提案で追加された競技。野球やスケートボードなど追加5競技はいずれも金メダルを狙える。さらに、柔道団体など日本が得意とする男女混合種目が増えたことも、金量産を後押しする。

これまでの日本は柔道、レスリング、体操、競泳と限られた競技に頼っていたが、他の競技の成長も大きい。バドミントンは複数の金が可能だし、卓球や自転車も初の金が狙える。テニスやゴルフも有力だ。30個は現実的な数字でもある。

毎日金メダルを見ることができそうなのが、今大会の特徴。予想には期待含みもあり、サーフィンなど条件次第で日程が変わる可能性もあるが、休むことなく日本勢が頂点を争う試合があることは間違いない。

過去は柔道、競泳、体操などで前半にメダルを量産し、後半尻すぼみになるケースが多かった。しかし、今回は後半に有力な空手などを配置。盛り上がりの持続を狙い、日程編成の段階から有望な競技を分散させた。前回は2日間だったレスリング女子の決勝も6日間。興奮が、毎日続く。

これまで競技の決勝が行われる16日間でメダルをとり続けたのは、12年ロンドン大会だけ。今回は、それを上回り毎日金メダルを取り続けそうだ。ステイホームの夏休み、テレビの前で日本選手を応援しよう。

日本の大会別メダル獲得数
日本の大会別メダル獲得数

<記者の目>

新型コロナの影響で、テニスやゴルフなどでは出場を辞退するトップ選手が出た。感染リスクを考慮して予選出場を断念した国もある。競技によって差はあるが、初の延期大会は「世界のトップ選手」が集う大会とは言えなくなっている。

海外勢には、徹底した感染防止対策が不利に働く。厳しい入国制限で、柔道やレスリングなどの「練習要員」は帯同できず。入国後の行動制限で、自由な練習もできない。強豪国は選手村とは別に選手をサポートする「前線基地」を置くのが通例だが、今回は無理。多くの事前キャンプも中止になり、時差調整や猛暑対策が難しくなる。選手は選手村で、感染対策しつつ孤独に調整するしかない。

精神面でも影響は大きそうだ。バブル方式での厳しい行動制限。ワクチン接種が進んで日常が戻りつつある欧米の選手にとっては、苦痛だろう。制限を守れなければ、資格停止。万が一感染すれば、試合にも出られない。心身のコンディションがいいはずはない。

対する日本選手は、国内の状況になれている。行動制限に耐えるすべも知っている。開催国の「地の利」は当然だが、今回は特別。欧州で国際大会や合同練習が再開する一方、日本の対外試合不足を懸念する声もある。しかし、総合的に考えれば「地の利」は、過去の開催国以上に大きい。

「不公平」な大会になることは否定できない。確かに、日本のメダル数も増えるだろう。ただ、その価値は変わらない。新型コロナ禍で練習もできず、競技することに悩んだ者もいる。それでも、信念を持って努力を続けたからこそのメダル。その価値はライバルとの比較ではなく、獲得までの道のりで決まる。必要だったのは競技力だけではなく、前向きに困難を乗り越える人間力だったはず。「東京大会のメダル」だからこそ、それを手にした選手をたたえたい。【荻島弘一】

(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「東京五輪がやってくる」)