<俳優 篠山輝信(31)>

 NHKの五輪特集番組で、以前、東京・花畑団地や五輪の会場予定地にリポーターとして行ったんです。その団地は64年の東京五輪の時にできた所で、当時から住んでいる人に会いました。年配の方ばかりですが当時の五輪の思い出を大切にしていて、ものすごく熱く語るんです。

 競技のチケットの半券をアルバムに保存していたり、知らない国同士の試合でも、五輪だったら何でもいいから見たかったとか、チケットは入手できなくとも五輪会場周辺の知らない外国人たちの写真を撮ったり、五輪の雰囲気を味わうためだけに会場に行ったと。皆さん共通の思い出を持っていて、うらやましかった。僕が70、80歳の時、若い人に、こんなに熱く語れて、みんなと共有できる思い出があるだろうかと。そんな熱い思い出を僕も手に入れたい。こんなことがあったと若者に言いたい。

 他にも多くの試合会場が造られる予定の江東区にも行きました。地元の皆さんはもう五輪でやりたいことを区に提案しているんです。たとえば、かっぽれを外国人と一緒に輪になって踊りたいとか。あと70歳くらいのおばあちゃんは「店をやっているから、外国人のお客さんが来てもいいように、今から英語の勉強をしてるのよ」と話していました。会場は立派な建物ができると思う。でも、いくらきれいな箱ができても、地元の皆さんが参加できなかったら意味がない。外国人が東京に来た時に地元の人と触れ合って、東京っていいなと感じてほしい。そしたら五輪が終わっても、また東京に来てくれるんじゃないでしょうか。

 NHK「あさイチ」でリポーターをやっていて、結構、日本中を旅しています。みんないい人だなと感じることが多いんです。まじめで優しいし、日本は人を誇れると思う。僕も五輪のために何でもいいから役立ちたい。人の温かさを外国の人にリポーターとして伝えたい。20年の五輪は、日本の人の温かさが伝わる大会になればいいなと思います。あとは、いつ聖火ランナーの声がかかってもいいように毎日ジョギングをやっています(笑い)。足はもう仕上がっています。(2014年12月17日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。