<元テレビ朝日アナウンサー 龍円愛梨(39)>

 スペシャルニーズがある人たちのために人生をささげることを決意しました。私の長男(3)にはダウン症があります。言葉の発達の遅れや筋力が弱いため、成長はゆっくりですが、好奇心旺盛な楽しい子です。

 13年5月に米国で出産し、昨年5月に一時帰国しました。米国は日本に比べて、特別支援が必要な子と親に対する育児環境が充実しています。長男には生後1カ月から専属の療育チームが組まれ、療育プランが立てられました。2歳になる頃には、言語、理学療法などを週12時間、無料で受けました。手話を300ぐらい覚え、意思疎通ができるようになりました。一方、今住んでる地域は、月1時間公的な療育が提供されるだけです。米国のようなサポートはないため、昨年11月からダウン症の子と親へ向けたコミュニティー教室を開催し、米国で実践して良かった療育や情報を共有しています。

 日本は他と「違う」ことに関して、もう少し寛容であってほしいと考えます。ある集まりで長男を紹介したところ、目を伏せられました。つらかった。「見たらかわいそう」という優しさはうれしくありません。拒否であり、壁となります。長男はかわいそうな子でなく、他の子と同じぐらい幸せで家族に喜びをもたらす存在です。長男のことを見て、知って、社会の一員として受け入れてくれる優しさが欲しいです。

 20年東京五輪・パラリンピックでは、文化プログラムに注目しています。先日、子ども向け音楽体験レッスンを受けました。英国人の先生が楽器を奏でて、さまざまな国籍の親子が英語で歌って、踊りました。言葉や人種、障害の有無を超えて、親も子も笑顔。まさに、ハッピーで音楽がいとも簡単に「違い」を超え、人をつないでいました。五輪・パラリンピックでも音楽などの文化プログラムを通じて、人と人がつながると素晴らしいなと思います。

 あと4年で日本社会が「いろいろな人がいて良い」という風潮になり、「違う」ことが普通に受け入れられる社会になってほしいと願っています。長男も4年後は7歳。特別支援学級ではなく、通常学級に入れたいと考えています。日本の学校システムも変えたいし、ここからが闘いですね。

(2016年5月18日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。