<在日韓国大使館韓国文化院院長 金現煥(49)>

 みなさま、五輪と聞いて最初に思い浮かぶのはなんでしょうか? 五輪史に残る名勝負や名場面などを思い起こす人が多いと思いますが、私は開会式と閉会式が浮かびます。この2つの式典は、開催国の文化や生活、歴史、国民性など国そのものを世界に披露する重要なイベントです。そういう意味でここ2大会(北京、ロンドン)の式典は文化的な底力と独創性が印象的でした。

 身近なところで言うと、大会期間中の交通網、服装、海外からのお客さんに対する国民の対応、街の風景など、すべてが開催国のアピールポイントになる。メダルをいくつ取ったかも大事かもしれませんが、世界が日本をどう見て、どう評価するかが、もっと重要かもしれません。

 私は昨年8月に駐日韓国文化院長に就任しました。日本行きを命じられた時、すごくうれしかったのです。実は、30歳の時に2年間、政策研究大学院に留学したことがあります。歴史的背景などがあり、それまではあまりいい印象がなかったのですが、実際に日本で生活してみて、日本人の人を思いやる気持ちを目の当たりにし、日本観が大きく変わりました。

 20年東京五輪は「おもてなし」が合言葉のようになっていますが、私は「おもいやり」こそが、日本人の心を表すものだと思います。人を思いやる心があるからこそ、人々の記憶に残るおもてなしができる。東京五輪は、その心を世界に発信するいいきっかけになるでしょう。

 私は在任中に、韓日両国の未来を担う若者たちがお互いの国に対する理解を深め、共存できる環境を作ってあげたいと思っています。イベントをこなすだけでなく、企画の段階から両国の学生が参加し、完成させる。今年は東京芸大や早大が協力してくれますが、今後さらに交流の輪を広げていこうと思っています。

 今年は5年ぶりに福島市でK-POPコンテスト東北予選を再開。被災地の方々の喜ぶ姿は、我々にとっても感動そのものです。また、今後は熊本でも文化的交流事業を実施できればと思っています。2年後の平昌冬季五輪、4年後の東京五輪に向け、両国が互いに力を合わせ、共に歩んでいくことを強く望みます。

(2016年5月25日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。