ボッチャって知っていますか? ボールを投げて目標球へいかに近づけられるかというスポーツです。2、3手先を読み合う将棋のような頭脳戦で、ボールを1ミリ単位で操る技術が求められます。戦況はめまぐるしく変わり、逆転につぐ逆転になることもあり、集中力も必要です。

 パラリンピック初出場の08年北京大会は団体10位、12年ロンドン大会は7位で世界との差を痛感しました。「国際大会で勝つためには何が必要なのか」と考え、「ボチトレ」と呼ばれる筋力トレーニングとライバルの分析に力を入れました。海外のパワープレーに対抗するために理学療法士らと考えてチューブトレーニングを取り入れました。

 体幹が安定して投球の精度も高まりました。また、ライバルの投球術や癖を動画で繰り返し確認して、特徴を頭にインプットしてから大会に臨むようにしました。国際大会でも優勝できるようになり、改めて準備の大切さが分かりました。

 リオ大会では史上初の銀メダルを獲得しました。あまりにも興奮し過ぎて「ウォー !! 」という雄たけびを何度も上げてしまいました。テレビや新聞では、雄たけびばかりが取り上げられ「やりすぎた…」と後々、後悔しました。けど、メダル効果は絶大で街中でサインを求められたり、「ボッチャの人だ」などと言われるようになりました。少しずつ世の中に認知されてきたのかなと実感し、うれしく思います。

 35歳で迎える東京大会は集大成と位置づけています。周囲の方の支えがあり、今の自分がいます。両親が見守る満員の会場で最高のパフォーマンスを発揮したい。確実に金メダルを取るための強化を進めて、恩返ししたいです。きっと、また雄たけびは上げるかと思いますが…。


(2017年11月1日東京本社版掲載)

【注】年齢、記録などは本紙掲載時。