今年4月、パーク24から組織委に出向しました。東京オリンピック(五輪)で柔道と空手が実施される日本武道館の運営を担当しています。柔道部員の自分が、まさか組織委で仕事をする日が来るなんて思ってもいませんでした。最初は戸惑いしかなく、奥さんに相談したら「一生に1度を経験出来るチャンス」と背中を押され、挑戦することを決意しました。

仕事面では不安ばかりでした。会社では柔道メインの生活を6年間続けて、1日8時間、フルに勤務したことがありませんでした。パソコンも左右の人さし指1本を使う指打ちで、出向2週間前にブラインドタッチやエクセルの使い方などを上司に教えてもらい、勉強しました。組織委では、国際競技団体など海外とのやりとりが多く、英語での会議が頻繁にあるため、国内で働いているとは思えない環境です。日本武道館も「NBK」と表記したり、覚えることが多々あり、必死です。

8月の世界柔道は、五輪の良いテストになりました。業務は受付中心でしたが、車いす席の方に大型ビジョンの見え方を聞いたり、安倍首相のボディーガードなどを務めました。“ギョーザ耳”のため、インカムを耳にねじ込んで、汗だくで会場を走り回りました。選手目線とは違い、大会を支える側の気持ちが分かりました。

子供のころから五輪を夢見てきましたが、この出向を機に、柔道の第一線から退くことを決めました。3月末から練習ができない中、9月の全日本実業個人選手権で1つ勝てたので、これを区切りと決めました。違った形ですが、今は夢である五輪に携われ、会社に感謝しかありません。ラグビーワールドカップでの飲食の持ち込み問題などを考えたり、視野も少し広がったと思います。

9カ月後の本番では、選手や観客の方へ、円滑な進行運営をし、世界中の子どもたちに感動してもらえるようなお手伝いをしたいです。名前の「頼誠(らいま)」の由来は、人から頼られるようにとの願いが込められています。夢舞台では、名前負けしないような仕事をしっかりしたいです。(274人目)