僕は甲子園に出てないので、オリンピック(五輪)に出ることがずっと夢で。00年のシドニー五輪が初めての大舞台でした。野球界においてはもともと、五輪はアマチュアが出る大会。社会人野球をやっている選手は五輪を目指すというのが目標の1つでした。それがシドニー五輪ではプロアマ混成チームに。今の侍ジャパンのような、最強チームができるきっかけでもありました。

その場にアマ側としていられたのは、とても幸運でした。マウンドに上がると、バックを守るのはプロのトップ選手たち。「プロで待ってるぞ」とか「お前のインコースは打てない」と励まされたことが、後に自信になりました。

当時、オーストラリアでは野球はさかんではありませんでした。クリケット場を野球場に造り替えた仮設の球場がメインスタジアム。有名なプロ選手が街を歩いていても、気付かれません。日本人の方が応援に来てくれましたが、試合は今まで感じたことがないほど静か。野球の音が聞こえました。

現地での盛り上がりの少なさと、カメラの向こうでたくさんの人が応援をしてくれているというギャップ。不思議な感覚を受けながらマウンドに上がりました。それが今回は日本ということなので、すごいだろうなあ。いつもと同じ環境の中で、金メダルを目指す。僕がシドニーのときに味わったことと正反対の感覚を味わいながら試合をする。ものすごい重圧を感じると思います。選手たちにはその中でプレーできることを幸せに感じてやってほしいですね。

五輪は野球だけじゃない。ファン以外の方も応援してくれる最大の機会。野球界にとってはチャンス。世界中の人が見てくれる。日本でやる意味は大きい。野球ってこんなに楽しいんだよっていうのを、世界に見せてほしいです。

ラグビーの「ONE TEAM」のように、日本の野球は一体感が魅力。1つになる思いの強さや、この1試合、この1球にかける思いを作り上げることが、日本人は得意。そのような魅力的なものを見れば自然とやってみたいとか、携わりたいと思ってくれる。そのための侍ジャパンだと思います。夢のある試合を期待しています。(293人目)